羽ばたけなくて
「ううん。新堂さんはいつだって、

 私のことを大切に考えてくれてる。

 自分の子どものように、

 いえ、それ以上に私へ愛情を注いでくれた。

 でもね……、やっぱり決められた相手じゃなくて、

 ―――好きになった人と、一緒にいたい。

 お父さんや新堂さんを考えたら胸がすごく苦しい、

 けれど、これだけは……譲れない。」

ゆっくりと慎重に言葉を選んでそう言った美園の顔は、

私と同い年とは思えないほど大人びていた。

好きになった人と、一緒に―――


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