羽ばたけなくて
それまで気を張っていた大志の顔から、

ようやく笑みがこぼれる。

美園と大志の強い絆が、新堂さんの心を動かしたんだ。

これからの関係を認めてもらえた2人の姿は誇らしく、

全身から幸せや喜びが滲み出ていた。

「よかったね、美園。」

それまでじっと見守っていた私も

たまらず美園に声をかける。

美園もほっとしたのか、

潤んだ目で私を見つめてこくんと頷いた。

大志も雅也に祝福されているのか、じゃれあっている。

笑い合う私たちをそっと見つめていた新堂さんが、

唐突に一つ咳払いをした。

その音に、私たちの視線が新堂さんへと集中する。

新堂さんはもう一度今度は軽く咳払いをすると、

「これで全て終わったわけではありません。」

と、冷静に私たちに告げた。

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