羽ばたけなくて
title:no title

text:わかった。待ってて。


それだけ送ると私はカーテンを閉めて

1階へと駆け下りた。

テレビから女性芸能人の黄色い声が聞こえる

リビングのドアを開けると、

私はキッチンにいるお母さんへと視線を向ける。

「ねえ、お母さん。」

私の呼び掛けに、

お母さんは手を休めて後ろを振り返る。

「なに、羽衣。」

「ちょっと、これから出かけてくるから。すぐ帰る。」

少し早口にそう告げると、お母さんの返事を待たずに

ソファに座るヨウへと近付き肩を叩く。

「ちょっと、ヨウも一緒に来て欲しいんだ。」

私の言葉にヨウは首を少し傾けながらも

「うん、わかったぁ。」

と頷き、私たちはリビングを後にした。

「2人とも、気を付けるのよ。」

お母さんの声に「うん」と返事しながら、

私たちは玄関を開けてすぐのところに待っている

雅也の目の前に立った。

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