羽ばたけなくて
「あ! 雅也お兄ちゃん!」

まさか家の前に雅也がいるとは思わなかったヨウは、

驚きながらも嬉しそうににっこりと笑った。

そんなヨウに応えるように

雅也は少しだけ顔を緩めると、

すぐにいつもの冷静な視線を私に向けた。

「どこか公園かなんか、ないか。」

雅也の言葉に私はこくんと頷く。

夏休み、4人で私の家で遊んだあの日。

逃げるように家を飛び出した美園がいた

あの公園が歩いてすぐの場所にある。

「こっちだよ。」

私はそれだけ言うと、ヨウと手を繋いで歩き始めた。

すぐ後を雅也が歩く。

ヨウはなんだか楽しそうに

鼻歌を歌いながら上機嫌で歩いている。

逆に私はこれから雅也に

どんなことを言われるのかが気になって、

緊張と不安で今にも押しつぶされそうになっている。

それでもどうにか歩みをやめずに、

目的の公園へと向かう。

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