羽ばたけなくて
私の知らない過去の雅也。

いつも1人で毎日を過ごしていたのが当たり前だったなんて、

雅也も中学時代はあまりいい思い出はないのかもしれない。

「美園はしっかり者で、大志はお調子者で。

 羽衣、お前はどこか抜けてて危なっかしいヤツで。

 いつの間にか俺は……

 羽衣を目で追うようになってたんだ。」

いつも冷静で無口な雅也から意外な言葉を訊いて、

私の鼓動がどんどんと早まる。

私を目で追うって、それって……。

「でも、きっとそれは

 羽衣が危なっかしいからなんだと、そう思っていた。

 俺が見ていないといけない、と必死になって……」

私はただじっと雅也の言葉を訊く。

唇を噛み締める力もじんわりと強くなっていく。

「でも、今日のあの時。

 美園に言われた言葉が俺の中で引っかかったんだ。」

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