羽ばたけなくて
今日のあの時の、美園の言葉―――

「あ……」

ふと思い出し、思わず私の口から声が漏れる。

私の反応を見た雅也はゆっくりと頷く。

「“俺が羽衣のこと、好きなんじゃないか”って。

 でも、それを言われた時、

 俺の中でいまいちピンとこなかった。

 そもそも、俺、人を好きになったことがなかったから。

 “好き”ってどういうことなんだろうって。」

今日の放課後、

私たちはいつもの様に『CANDY』に行った。

その時、美園がイタズラな笑顔を見せながら

雅也にそう言っていた。

美園にとっては冗談なのかもしれないけれど、

あの時、私の心もドクンと反応した。

私は大きく暴れる鼓動をもうどうにもすることが出来ない。

顔がみるみる真っ赤に染まり

全身が波打っているのが分かる。

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