羽ばたけなくて
そうだったんだ。

美園の許婚だった男性にも、好きな人がいたんだ。

美園と大志がきっかけとなって、

それぞれの幸せに向かって歩き始めたんだ。

すると今度は新堂さん、いや、衛っちが口を開いた。

「ご主人様の会社はご心配要りません。

 美園……さんのお相手だった方の

 ご理解を得ることが出来、

 経営を全面的に支えていただけることになったのです。」

私はほっと胸を撫で下ろす。

よかった、相手の方に全てを理解してもらえて。

そして、関係を壊すことなく

共に足並み揃えて前へ進むことになって。

私たちの周りの全てが明るい未来へと向かうことが出来て、

本当に本当によかった。

「だから、私はずーっと大志と一緒にいられるんだ。」

そう言うと美園が無邪気に大志へと抱きつく。

急に抱きつかれて大志の顔がみるみるうちに赤く染まる。

「おい、お前……。はなれろよ。」

そんなことを言いながらも、

大志の表情はとても柔らかい。

みんな、それぞれの幸せを掴むことが出来たんだ。

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