Breblly I 〜オオカミとアカずきんは恋をした〜

老婆とリング ( レン )

「やっべ!もうこんな時間か!?」
いつもオレが行く時間より今日は一時間も遅れてしまった。
アカ、怒ってるよなぁ・・・・。
「・・・・痛っ!」
見ると、数ヶ所ある傷の一つから血がにじみ出ていた。
昨日やられた所だ、くそっ・・・っ!
オレはそれをおさえながらブレブリーの花畑へ急ぐことにした。
「ん・・・・?」
途中、全身マントをかぶった変なお婆さんが立っていて、オレは足を止めた。
「派手にやられたねぇ、レン君。」
「はぁ・・・。」
お婆さんの体はこっちを向いているが、鼻先くらいまでマントをかぶっていて口元しか見えない。
何でオレの名前を知ってるんだ?
「あたしが治したあげるかい?」
「いや、舐めてれば治るんで・・・。」
オレがそう言うと、お婆さんは驚いた表情をした。
「そうかい、若いねぇ・・・。」
「・・・・・。」
よく分からないけど、お婆さんは楽しげに笑った。その笑顔がオレには不気味でしょうがない。
「あの・・・、オレ待たせてる人がいるんで。」
「その傷、話さない気かい?アカ様、きっと心配するだろうねぇ。」
「なっ・・・!?」
何なんだ?この人・・・。オレの名前を知ってればアカの名前も知ってるし。オレの傷の事も、多分知ってる・・・。
顔を上げてもう一度お婆さんの顔を見て見たけど、やっぱり笑ってるだけで何も言わない。
「何が言いたいの?てか、お婆さんには関係ないだろ??」
「素直じゃないねぇ・・・。まぁいいがレン殿にこれを渡そうと思ってな。あたしの用事とやらはそれだけだよ。」
そう言ってお婆さんはオレに銀色の輪っかのようなものを渡してきた。
何だこれ?
「いつかきっと役に立つよぉ〜?素直になれるかもねぇ。ヒッヒッヒッ・・・。」
お婆さんはニヤリと笑った。その笑みは何か企んでるように見えた・・・。
「いらない。・・・失礼します。」
俺は銀の輪をお婆さんに返して、その横を逃げるように通った。
通り過ぎた後もオレを見てる視線を感じたけどオレは振り返らず歩き続けた。
その後、お婆さんはシワだらけの口を開き、小さく呟いた・・・。


「忘れ物だよ・・・・。」


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