Breblly I 〜オオカミとアカずきんは恋をした〜
第一章 赤いずきんと青い毛

アカずきん ( アカ )

「アカ様!アカお嬢様!どこです!?」
ふふっ・・・、探してる探してる!
あたし、アカはただ今隠れんぼ中。・・・って言ってもあたしがただお勉強が嫌だから隠れてるだけであって本当に隠れんぼしてるわけではないんだけどね?
メイドのサイオラが一生懸命探してる中あたしは見つからないように草が生い茂ってる所に隠れることにした。すると外から他のメイド達の話し声が聞こえてきた。
何話してるんだろう・・・?
「アカ様の奥様、アカ様をお産みになってすぐ亡くなられたのでしょう?」
お母様の・・・話?
「アカ様も可哀想に、お母さんを知らないまま時を過ごしすなんて・・・。」
同情・・・してくれてるの?でも、何で笑ってるの・・・?
「奥様も奥様よねぇ・・・、どんな手を使ったのかしらね?」
・・・やめて。
「さぁ?身体でも売ったんじゃないかしら?」
やめて・・・。
「いやらしいわねぇ、これだから一般」
「やめて!!お母様の悪口言わないでっ!」
「アカ様!?」
「いつからそこに!?」
二人は驚いた顔をしてあたしを見た。
どうしてそんなひどいこと言うの?お母様は世界一素敵な人だったってサイオラもお父様も言ってたよ?なのに・・・なのにっ!
「・・・お母様は病気だったのにアカを死ぬ気で産んでくれた立派な人だって言ってたもん。」
そうだよ、お母様は立派な人だもん。会ったことはなかったけど、それでもあたしのたった一人のお母様だもん!
「アカの・・・アカのお母様の悪口言うなぁー!!わぁぁぁぁんっ!!」
あたしは二人に精一杯怒鳴り、泣き叫んだ。
「〜・・・っ!」
・・・サイオラ?
振り返ってみると、サイオラが汗水垂らしながらこっちに走ってきた。
「アカ様!ここにおられたのですか!探しましたよぉ・・・って、え?」
「サイオラァ〜・・・っ!」
あたしはサイオラに泣きついた。最初は少し驚いた顔をしたが、すぐに抱きかかえてくれた。
「どうしたのですか?」
「ヒック・・・、この二人がね?お母様の・・・悪口っ、言ったぁ〜!」
「まぁ!」
サイオラは二人を睨みつけた。それと同時に二人は深々と頭を下げ、あたし達に謝り続けた。
「それでね?アカ、お母様の悪口言うなって、言ったの・・・っ!」
「偉いですね、アカ様。よく頑張りましたね、・・・偉いですわっ!」
「ぅわぁぁ・・・んっ!!」
サイオラはよしよしと言いながらあたしの頭を優しく撫でてくれた。でも視線を再び二人に戻すと、いつもの優しいサイオラの表情は一瞬で変わった。
「貴方達!!アカ様を傷つけるようなこと、ラフィス一族をコケにするような言葉、今後一切口に出さないこと!・・・いいですね?」
「「はい!!申し訳ありませんでした!!」」
「取り合えず、屋敷に戻りましょうか!」
頭を下げ続ける二人を背にサイオラはあたしに笑いかけ、抱きかかえたまま部屋まで連れて行ってくれた。
「アカ様!サイオラ!」
ノックもせずにいきなりランじいが入って来た。
「そんなにお急ぎになられてどうなされたのですか?」
「王様が今、お帰りになられました!」
「え!!お父様がっ!?」
「はい。ただ今ご自分のお部屋にてアカ様をお待ちです。」
「やったぁー!!」
あたしは思いっきりドアを開けてお父様のいる部屋へ走った。
お父様が・・・、帰って来たんだ・・・っ!!
大きくて重たいドアを開けるとあたしの足元からお父様の椅子まで赤い絨毯が真っすぐひかれていた。
「お父様っ!!」
あたしは迷いなくお父様の元へ走った。
嬉しい?当たり前だよ!お父様に会うのは二ヶ月ぶりなんだもん!
「おお!アカ、元気だったか?少し髪が伸びたんじゃないか?」
「えへへっ!だって切ってないもん。お母様ぐらい伸ばすんだ!!」
「そうかそうか!」
お父様は嬉しそうに笑った。
いつも肖像画を見てた・・・。
「あたしもいつかお母様みたいになるんだ!」
そう言ってお父様に抱きつき、この二ヶ月のことを沢山話した。
「そう言えば、話ってなぁに?」
「あぁ、アカも今年で7歳だろ?そろそろ先祖代々伝わるずきんを今度はお前に授ける番かなと思ったのだよ。」
「先祖代々伝わるずきん?」
「そうだ。そのずきんをかぶると国の立派な王子、または姫君になったという証拠なのだよ?」
「へ〜!」
お父様が持って来たずきんは本当に「わぁ!」と言うほど凄く綺麗でも赤でもなく、そこら辺にあるごく普通の赤いずきんだった・・・。ただ、少し他のよりもずきんが長くなっていてマントみたいだった。・・・それだけ。
これが先祖代々伝わるずきん?普通・・・だよね?
でもお父様にとっては凄く大切なずきんらしく、持ち上げるのも凄く丁寧だった。
「アカ、これからは何があっても強く生きるんだよ?このずきんはただのずきんじゃないから決して捨てたり乱暴に扱っちゃダメだからね?」
ただの・・・ずきんじゃないの?
「何の力があるの?」
「それは、アカが大きくなってから判ることだよ。絶対手放さないって約束出来るかな?」
「うん!!」


この約束をアカはちゃんと守り、毎日欠かさずかぶっていた。アカがすぎんをかぶるようになったせいか、国民はアカを正式に姫君と理解し、「アカずきん」と名乗るようになっていったー・・・・

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