Breblly I 〜オオカミとアカずきんは恋をした〜
オオカミの鳴声が聞こえた瞬間、オオカミ族の国の方へ続く森が一斉にざわめき出した。
「早くっ!僕の背中に乗って!!」
「う、うんっ!」
リンゼ君の背中に乗ったのはいいものの、オオカミ族の活動時間になってしまったからには大門はもうしまっているはず・・・。
どうしよう・・・。
うだうだ考えているうちにあっという間に大門前に着いてしまった。
「やっぱり閉まってる・・・。」
「僕がジャンプしてなるべく囲いと平行になるようにするから、アカは頑張って囲いの上に立ってくれる?」
ああ!その手があったか!!
「リンゼ君は?」
「僕が立ったら柵に刺さっちゃうだろ。」
苦笑いしながらリンゼ君は自分の手首を舐めた。
怪我してる・・・。
私はポケットから自分のハンカチを出してそれをリンゼ君の手首に巻いた。
「あ、りがとう・・・・。」
「ばい菌が入るから、オオカミの姿だとしても舐めたらだめだよ?」
リンゼ君は目を見開いて驚いた顔をした。そんなに大きな事はしてないんだけどな・・・。
「アカは、・・・そんなに兄貴が好き?」
「え・・・?」
いきなり何、言ってるの・・・・?
「僕、やっぱアカが好きだな。ねぇ!兄貴なんて止めて僕のとこに来ない?」
リンゼ君は目をぱっちりとしてニコニコしながらそう言った。
「まぁアカに拒否権はないし、僕一度決めたら曲げない主義だからどちらにせよアカは僕の彼女になると思うよ?」
「どういうこと・・・?私が、リンゼ君の彼女になる・・・って。」
リンゼ君は子供らしく無邪気にくすっと笑う。何か企んでるように見えるその笑顔は私の背中をゾクリとさせた。
「僕さぁ、口が凄く軽いから君たちが毎日あそこで会ってるなんて言わない保証がないんだよね。」
「なっ・・・!」
「そんなことになったら兄貴はただしゃすまないよねぇ・・・、もしかしたら死刑・・・?」
死刑・・・・。
考えただけでゾクッとする。
「だけど、証拠なんか何もないしゃない!」
そうよ、証拠がなければ罪になりようがない。
でもリンゼ君は私の発言を可笑しそに笑った。
「馬鹿だなぁ。」
「んなっ!?」
さっきから聞いてれば馬鹿にしてばっか!年下のくせに失礼な奴め!!
「知ってる?オオカミ族の国では罪を決めるのは国民なんだ。国民次第で全てが決まる。だから国民からの投票が多ければ多いほど死刑になる確率が高くなるっつて訳。」
「・・・・・。」
「兄貴は昔から国民からの評価が悪いって知ってるでしょ?
もし僕が兄貴を死刑候補に出したら断然僕の方が有利って事なんだ。・・・分かる?」
「・・・・っ!」
そんな・・・っ!!
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