Breblly I 〜オオカミとアカずきんは恋をした〜
・・・もっとあの瞳を持った少女に優しくしてやれば良かったのかな?・・・・いや、きっとどんなに優しくしてもあの人は兄貴のところに行ってただろう・・・。
アカに「生きる」か「死ぬ」か聞かれた時、僕は何も言えなかった。その時点でもう決まってたんだ。
・・・・・でも、
「リンゼ君・・・。」
アカは痛そうな、悲しそうな瞳で僕の名前を優しく呼んだ・・・。
でも兄貴・・・、
これでも僕は本当にアカに惹かれたんだよ?
本当に好きだったんだ・・・・。
もっと優しくしたり、自分の気持ちに素直になればよかった・・・。
今更後悔するなんて僕も馬鹿だなぁ。
「ごめん、ごめんね・・・・。」
何で謝るんだよ・・・。
アカはずっと「ごめんね」と呟きながら僕を包み込んでくれる。
彼女から伝わる体温が温かくて、愛しくて、苦しくて・・・・またどうしょうもないくらい兄貴が妬ましく感じてしまう。
「アカッ!」
見てみると遠くから兄貴が大きな声を出して走って来た。
「うそっ・・・!?来ないでって・・・。」
「いや、待ってたんだけどいくら待っても戻ってこないから心配で・・・・。」
確かに、僕とアカが会ってから一時間は余裕に経ってるはず・・・。兄貴が心配するのも無理はない。
「そ、それは謝るけど・・・・。」
アカはチラチラ僕を見た。また何か言うとでも思ってるのだろうか?
アカにとって僕はとんだ悪人だな。心が痛いよ・・・。
「まだ話があって・・・。」
「話は終わったよ。」
「えっ!?」
アカは目を見開いてこっちを見た。
「あーあ、僕もアカが好きだったからチャンスだと思ったのになぁ!」
何もなかったような振りをしてわざと大きな声を出すと、兄貴は僕の言葉に反応して耳をピクッと動かした。
まだアカが好きとしか言っていないのにめちゃくちゃ殺気を感じる。
兄貴のそういう所が面白いんだけどね・・・。
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