急に女扱いされても困る
「…っぶっはははははは!!!!暑いから放してくんね?って!!!!しかも真顔で!!!!!あははははっ!!!!」
「うっさいなあ…」

一度虎高に帰り、軽いミーティングを済ませ解散した後の帰り道。駅のホームだというのにバシバシと僕の背中を叩きながら大笑いしているのは同じ2年の谷川だった。こいつ、黙っていれば静かな知的眼鏡なのに…

「まあでもあれで明がときめいたらそれはそれで気持ち悪いよな。」

一部始終を見ていた中神は静かに苦笑しながら結構精神的にくる台詞を吐いた。なんなんだよお前ら、言いたい放題言いやがって。

「しょうがないじゃん…暑かったし。」
「あの1年の間抜け面、ホントヤバかったなあ…俺少し同情したよ…」

笑いを収めつつそう言う谷川。僕の一言を聞いた永谷はどこか拍子抜けたような顔をしていた。あいつは僕に何を求めたのだろう。まさかアレで本当に僕が落ちるとでも思ったのだろうか。だとしたら是非ともこれで諦めてほしい。

「…あ、じゃあ俺ここで降りるな。」

谷川が車内放送を聞きながらそう言った。僕たちは首を傾げる。

「あれ、お前の最寄ってもう一個隣じゃね?」
「玲衣と夕方デートの約束があんだよーん。」

中神の疑問を自慢気に笑みを浮かべて答え、奴は颯爽と降りていった。
玲衣、というのは1年のや木ノ下玲衣さんで谷川の小学校来の幼馴染だとかなんとか。僕が奴と会った時には既に付き合っていた。あと何故か玲衣さんは僕を男扱いしない。何故だ。

「別に彼女云々はどうでもいいけど、あいつは腹立つな。」
「明日ボール顔面にぶつけてやろうかな。」

僕と中神は最寄駅が同じためくだらない話をしながら一緒に降り、改札へ向かった。するとそこには意外な人がいた。
「あれ、龍?」
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