急に女扱いされても困る
「そうそう。こないだの1on1がいい例だな。」

谷川に続き秋田先輩が後ろから会話に入ってくる。

「普通バスケってちっこい奴がでっかい奴を相手にするとしたら、速さとかで勝とうとするだろ?」

秋田先輩の説明に小声でちっこくてすみませんねと呟けば、中神がぼそりとチビ、などと言ってきた。ドリンクの濃さ10倍でいいかな。

「明は別に速くないことはない。正直俺たちの中では中神の次くらいにすばしっこいと思う。」

そこで一度切り、にやりと僕を一瞥した。いつの間にかみんなの歩は止まっていた。

「ただ明はよく頭が回る。人より少しだけ、クラスに一人か二人はいるであろうレベルの秀でた運動能力を、少しだけ、大会にいくつかはそんなチームもあるであろうレベルの秀でた仲間を、環境を、時間を、たったの一瞬でその全てを生かしたプレーをするんだ。」

正直言い過ぎだと思う。別に一瞬で思いつくわけではないし、決してそれが100%成功するわけでもない。もしかしたらこの先、成功して悪い結果を迎えるかもしれない。だからチームプレーの時は必ず何人かに意見を仰ぐ。僕はまだまだ未熟者だから。
いくつもの視線が僕に突き刺さっているのを感じても、僕は照れることも怒ることも威張ることもしなかった。別に照れるようなことではない。別にキャプテンである秋田先輩が本心でそう思っているならそういうふうに見えるのかもしれない。別に威張れるほどすごいことだとは思わない。
ただ。

「…どうせバスケするならさ、」


「面白い方がいいでしょ。」
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