急に女扱いされても困る
ゲームは一瞬で終わった。いや、その表現は間違えてるかもしれない。正しくは僕が相手を抜いてからゴールにボールを入れるまでが一瞬だった。

「…な…」

相手は呆けている。周囲で見ていた時雨坂の人たちも。ただ、僕のことをしる虎高の人たちは、やれやれと言わんばかりに苦笑、或いは…自分で言うと気恥ずかしいけれど、憧れの眼差しを向けてくれた。

「はい、僕の勝ち。約束通り練習に「アキラさん!!」うお、は、はい」

突然近づいてきたかと思えば、奴はガシッと僕の両手を両手で掴んだ。痛い。

「俺と付き合ってください!!!」

その場にいた奴を覗く全員が固まった。僕は今告げられた言葉の意味を飲み込むべく頭をフル回転させてみるが、どうもわからない。

「…あ、自己紹介まだでしたね!俺は1年の永谷亮平です。」

「いやそうじゃなくて…」

思わず言葉を発してしまった。発してしまったからにはいろいろ聞かなければいけない。

「えーっと…付き合うってのは練習に、でOK?」

「いや?俺の彼女になってほしいってことっす。」

聞くんじゃなかった。最後の希望を打ち砕いてしまった。僕は頭を抱えたくなったが永谷に両手を掴まれていることを思いだし、仕方なくため息を吐いた。

「…今までのやりとりの、どこにそうなる要素が?」

「アキラさんが強いからですね!いやあまさかボールを下に思いっきり叩きつけて上に上げて、その間に俺を抜いて、飛んで空中でそのままゴールにいれるなんて!!!俺ビックリしました!!」

先ほどまでの態度とは正反対である。さっきのが狼だとしたら今は尻尾を全力で振ってる犬。

「あーっと…お断りさせていただきマス…」
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