恋色キャンバス~君がおしえてくれた色~
 僕が、ル・ビアンさんが苦手な理由は……。


「ヒジリ、スイーツ、ドウシマシタカ。
オイシイデスカ」


「美味しかったですよ」


「ヒジリノホウガ、モットオイシイトオモイマス」


言いながら、近づいて来た。


こんな風に言ってくる。

 ガストン・ル・ビアンが、ゲイとは
有名でデザイナーには多いと聞いたことがある。

けど、僕は、好きな人がいるから絶対に
嫌で絶対に参加したくはなかった。



「ル・ビアン様」



父さんは、ル・ビアンさんの肩を掴んだ。



「マサキ、ドウシマシタカ」


「私の大切な子供に対し、冗談でも、そう言うことは、お控え下さい。

私にとって、命よりも大切な子を、あまりいじめないで頂きたい」


いつも、ホワホワしてる父さんは、
僕が、本当に困っていると助けてくれる。
 
ビシッと言ってくれる、格好いい父だ。



「スミマセン、ジョウダンがスギマシタ」


「分かって頂ければいいんです」


「ジャア、タノシンデイッテクダサイ」


ル・ビアンさんは、
何処かに行ってしまった。


「はぁ」


少し怖かった。
僕の身長は177cm で大きい方だが、
ル・ビアンさんは、2m近い大男。

だから、凄く圧迫感を感じた。

そんなことを考えていると、
頭に手が置かれた。



「聖、大丈夫か? 少し外出るか」



今、ふっと思った。

父さんと身長が変わらないことを。

前は、少し屈んでいたのに、今は
少し心配に顔を覗き込んでるだけ。

ちょっと、嬉しくて、怖さが無くなった。



「聖、平気か?」


「うん、落ち着いた」


「そうか」


「さて、帰るか」


行きなりどうして?


「ル・ビアンさんにも会ったし、
他の人にも挨拶したし」


「着てから、少ししかたってない。」


「まだ、居たいのか」


それは……、



「スイーツなら、聖が来る前に
家に送って貰える様に頼んでおいた。

それに、後はこいつに頼めばいい」


「はっ、何、言ってるんだ、政樹」



いきなり、いっくんのお父さん、登場。



「航介(コウスケ)、頼むって」


「お前なぁ」


なんか、始まった。


「聖、よっ」


「あっ、いっくん」


「帰るのか?」


「多分」



父さんが帰るって言ってくれたし、
元々、来たくなかった訳で……。



「あの、郁磨さん」


「雫ちゃん、そのドレス似合ってるね。
折角、綺麗なのに少ししか見れなくて
残念」


「ありがとうございます」



シーちゃん、照れてる。



「ほら、帰ろ」


「政樹のアホが!」


「後で埋め合わせはするから
要、聖、雫、帰ろ」


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