恋色キャンバス~君がおしえてくれた色~
それから、三十分くらいだっただろうか。

あの後、いっくんが保健室まで運んで
くれたみたいだった。

凄く疲れていたから、眠りについた。




「ぅん」


気がつくと外は夕焼け色に染まっていた。

椅子に座って、ベットにもたれかかって
寝ている、幸来ちゃんの姿があった。

僕は、ゆっくり起きて、


「幸来ちゃん」


「ぅん」


「あっ、聖君、起きたの!」


大きい声は、頭に響いた。


「大丈夫、ごめん、大きい声出して」


「ううん…、いっくんは?」


「あー、ちょっと、先生たちと話して
くるって戻ってきてない」


「そっか」


頭が冴えてきて思った。

幸来ちゃんと二人きり。

普段だったら、緊張するのに、今は、
何でか、落ち着いている。

一人じゃない。


「でも、郁磨君が、聖君を一人にすると
いけないから側にいてあげて欲しいって、
言われたんだけど、どういう意味なの?」


「ちょっとね」


言って、嫌われたくない。

扉があいた。


「あっ、いっくん」


「聖……、大丈夫なのか」


「うん、何か、寝てスッキリした」


「そっか、悪かった、怒ったりして、
驚いたよな」


「ううん、僕も悪いから」


「聖、帰るぞ」


「うん」


「峰岸さんもありがとう」


「ううん、私はいただけだから」


居てくれるだけでも、
今の僕には、凄く心強い。



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