恋色キャンバス~君がおしえてくれた色~
「両親が、離婚したの。


小さい頃は幸せだった。

仲のいい三人家族。

母の店に来る御客さんたちにいつも羨まし
がられてた。
私もその事が何より嬉しかった。

でも、私が小学六年生になった頃からかな
仲が悪くなり始めて、いつも喧嘩ばかり。


家に帰るのが怖かった。

家に帰れば、両親の怒号が響き渡る。


でも、お母さんもお父さんも大好きで、
何とか繋ぎ止めてたんだよね。

でも、私が中学にあがるとお父さん、
帰ってこなくなちゃった。

お母さんに聞いたら、別居だって言うし、

たまにお母さんに内緒で、お父さんに
会って、居なくならないでって、お願い
しても謝られるし、悲しかった。


それで、高校にあがるなり、離婚する
ことが決定して、私の親権争って裁判には
なるし、辛くて悲しくて寂しかった。



それでね、今年の三月に正式に離婚が
決まって、私は母と暮らすことになった。


父に会えなくなる訳じゃないけど、
凄く辛くて、母と暮らせるのは嫌じゃない

でも、私が望んでいる風景はもうない。


父と母が笑って、そこに御客さんが居て
皆、楽しそうにしてる。
あの、大好きな空間はもう存在しないん
だって思うと悲しかった。

辛くて、辛くて、でも、泣けなかった」


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