最期
「もちろん、連れて出ます!」


本当にそのつもりだった。


だって、あの人に子育てなんか出来るわけがない。


そう息巻いていた私を宥めるように、女性相談員は言ったのだ。


「仕事もしていないあなたが、幼い三人の子供を抱えてどうやって生活していくの?

あなたは実家もないんだし、子供たちを置いて仕事をすることになれば、今よりもずっと辛い思いを子供たちにさせるかもしれないわ?

よく、考えてみて」


世の中の大半の女性は実家を頼り、離婚しても親に面倒見てもらえるんだろう。


でも私は違った。


母を早くに亡くし、父は兄夫婦に引き取られ、同居している。


だから実家と呼ばれるような場所は私にはないのだ。


ずっと可愛がってくれていた兄は、結婚した途端、奥さんの言いなりになり、私が頼っていこうものならきっと門前払いに決まってる。


まあ頼るつもりはさらさらなかったけれど……

< 10 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop