最期
あの時の相談員の女性が、このことを見越してアドバイスしてくれたんだとしたら、恐れ入ってしまう。


子供が大きくなるにつれて、夫がいなくても大丈夫になっていったし、なによりきちんと生活費をいれてくれたのだから、お金の苦労をすることもなかった。


離婚していたら、子供たちにも不自由な思いをさせてしまっただろうし、寂しい思いもさせたかもしれない。


今となっては、あの相談員の女性に感謝の気持ちでいっぱいだ。


子供たちは成長し、話し相手にも相談相手にもなってくれた。


だから、娘が夫を嫌いになったのには、私に原因があるんだと思う。


息子は同じ男として、夫を理解しようとしてくれていたけれど……


目の前の遺影は、一番いい笑顔のもの。


普段はあまり見せることのなかった貴重な笑顔が、私の方を向いている。


これから、定年になってやっと二人で過ごせるって思ってたっていうのに……


――あなたは最期まで、私には寄り添ってくれなかったのね?
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