最期

家族葬でひっそりと送ったあとに知らせた、夫の知人や友人、仕事関係の方たち。


義理じゃない訪問に、あぁ……彼はこんなにも人徳があったのかと、初めて知った瞬間だった。


四十九日の納骨の日まで、寂しいなんて言ってられないくらいの訪れる人々に、私の知らなかった夫の思い出が語られる。


家族には無頓着で、無関心だったあの人は、仕事での人の接し方は半端じゃなかったんだと感じた。


ある人は言う。


彼が羨ましいと……


「どうしてですか?」


私が訊ねると、にっこりと笑う。


「あなたみたいな奥さんがいたんですから」


目を丸くして驚いていると、その人は神妙な面持ちになった。


「ご主人が仕事に没頭できたのは、奥さんが家庭を1人で守ってくれたおかげでしょう?

普通はそうはいかないものですよ?

周りはみんないい奥さんをお持ちだなと思ってたはずです

もちろん、ご主人も僕にそう言ってたこと、ありましたしね?」


……。


鼻の奥がツンとした。


私はあの相談員に言われた通り、ただのお給料を運んでくれる人として、夫だと父親だと思わないようにしてきただけなのに……

< 14 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop