最期
家族葬でひっそりと送ったあとに知らせた、夫の知人や友人、仕事関係の方たち。
義理じゃない訪問に、あぁ……彼はこんなにも人徳があったのかと、初めて知った瞬間だった。
四十九日の納骨の日まで、寂しいなんて言ってられないくらいの訪れる人々に、私の知らなかった夫の思い出が語られる。
家族には無頓着で、無関心だったあの人は、仕事での人の接し方は半端じゃなかったんだと感じた。
ある人は言う。
彼が羨ましいと……
「どうしてですか?」
私が訊ねると、にっこりと笑う。
「あなたみたいな奥さんがいたんですから」
目を丸くして驚いていると、その人は神妙な面持ちになった。
「ご主人が仕事に没頭できたのは、奥さんが家庭を1人で守ってくれたおかげでしょう?
普通はそうはいかないものですよ?
周りはみんないい奥さんをお持ちだなと思ってたはずです
もちろん、ご主人も僕にそう言ってたこと、ありましたしね?」
……。
鼻の奥がツンとした。
私はあの相談員に言われた通り、ただのお給料を運んでくれる人として、夫だと父親だと思わないようにしてきただけなのに……