最期
「なんで?」

「いつも4人だょ?」

「お父さんいなくてもいいよ?」


私達は口々にそう言って母を慰めた記憶がある。


その時は慰めてるなんて気持ちは微塵もなくて、本当にそう思ってたから。


4人で出かける動物園はすごく楽しくて……


母の気持ちなんか何一つわかってなかった。


今、自分が子供を持ってみて、はじめてわかる母の思い。


3人の子供を一人で連れて出かけるのは、本当に大変だ。


夫の協力は不可欠で、私はそれを得ることが出来てる。


だから母の苦労は並大抵じゃなかったんだと、改めて思うのだ。


思春期になり、母をも、うっとおしく感じた中学生時代。


必死に育てた娘から辛く当たられて、どんな気持ちだったんだろう?


それは弟にも言えることで、この時期、母は孤独を味わったかもしれない。


大人になり、母の気持ちがわかるようになった今、私は父が嫌いだった。


仕事にギャンブル、子育てにも家事にも協力しない父。


母の苦労を思うと、ひどい父親だとしか思えなくて……


だから、父との思い出は何一つない。
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