最期
――私は大丈夫、お父さんと納骨までの間、久しぶりに二人でゆっくりするわ……


帰り際に聞いた母の言葉。


あんなに父の文句ばっかり言ってた人が、どこか寂しげで……


本音を言えば、父が早くに亡くなって、母はホッとしてるんじゃないかって思ってた。


だけどそれは違ってたらしい。


いくら娘といえど、夫婦のことは誰にもわからないものなんだと、その時私は悟った。


愚痴は愚痴……


仕事で忙しかった父と、母がようやく二人きりになれたのは、皮肉にも父が死んで骨になった、今なのかもしれない。






仕事人間でギャンブル好きな父。


それは私たち家族の父への印象。


母も、そんな父に何度もお金の苦労をさせられたという。


借金を重ね、母が働いて貯めたお金を、そのために返済していたらしい。


3人の子供を抱え、母は離婚を考えた時期もあると、いつだったかポツリとこぼしたことがあった。


母が離婚しなかった理由。


それは何故なのかはわからない。


でも、父を看取ることが出来た今、母の顔はとても満足そうに見えた。
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