最期
息子
俺たちが一番父親を求めていたのは、たぶん思春期の頃だったと思う。
中学生の俺たちは、悪さばかりして、よく母を困らせた。
何度も呼び出される学校からの連絡は、母を悩ませていたことだろう。
万引きもしたし、友達に暴力を奮ったこともある。
その度に母は、いろんなところで頭を下げ、謝り通しだった。
悪いと思いながらも、無意識にもっと悪いことをすれば父が出てくるんじゃないか、叱ってくれるんじゃないかって、思っていたのかもしれない。
けれど、父が出てくることは、最後までなかった。
男同士で話すことも、肩を並べて酒を酌み交わすこともなく、あっけなく父は死んだ。
これから、結婚して嫁さんに会わせて、孫だって抱いてもらいたかったっていうのに……
姉はそれを果たせたけれど、父との距離が縮まった訳じゃない。
父は、家族に対して、一ミリの興味もなかったんだと思った。
――だけど、俺らは?
姉は嫁に出て、違う名字を名乗ってる。
俺たちは父の名を継ぐもので、孫もまたそれを引き継ぐものだ。