阿漕荘の2人
紫子side

「…これは何かな?」

写真を撮っている時だった

紫子はベットの脇にカメラを落としてしまった

急いで櫻子はベットの脇に滑り落ちて

カメラの送信ボタンを押そうとしてた…

しかし
櫻子が落ちた衝撃音で隣にいた犯人達が
自分達の行動に気付いてしまった

櫻子は急いで
ベットの下にカメラを隠す

しかし

我孫子はベットルームにすでに入ってきていた

仲間とみられる共犯者2人に
ベットの下を探すように

命令する

「…答えるんだ、コレで何をしていたの」

我孫子が櫻子に詰め寄る

「それはうちのや!
櫻子は関係ないで!」
「やめな!だまって、しこ!」

我孫子はうちを睨む

「…おい、信二、お前は櫻子を抑えとけ

要はカメラの中をみろ」


我孫子が近づく
ベットの側から立って
うちを見下ろす


ー頑張れ、うち
今は時間稼ぎや

きっと

れんちゃんは来てくれるー


「何してたの」

「…カメラで写真とる以外に何をするん」

「…なんで写真なんか撮っていたの

……自分が縛られている写真が
欲しいわけ」

「あんたやないんやから

そんな、大層な趣味あるわけないやろ


変態もほどほどにしや」


我孫子は舐めるようにうちを見る


ほんまに気持ちわるい


ヘビみたいな目をしとる

何考えてるんやろ


「…じゃなんで」

「…状況証拠や

後であんたらまとめて警察に突き出す時に
この写真つこーて

あんたらの事

おいつめたるで」


「ふぅん
なかなか賢いんだね

意図も簡単にクルマに乗ったキミとは思えないな……」


その時、悲鳴が聞こえた

櫻子だ!!

「ちょっと何するのよ!

手を離しなさい!!!」

共犯者の男が
櫻子にまたがり、帯を解こうとしている

思わず男の顔を見て

ゾッとした



ニタニタと笑う
薄汚い男の顔が月光の光を帯びる


そして、そのどぶネズミみたいな男の
肉肉しい手が
櫻子の帯を解きだす


「やめろ!!櫻子から手を離せ!!

お前みたいな下衆が
触っていい女じゃないんや!


我孫子も何か言えや!

好きやったんやろ、櫻子のこと

好きなら、助けてやれや!!」


紫子の怒鳴り声が部屋全体に響く

しかし

紫子は我孫子の次の言葉に

声を失う

「信二……床じゃ可哀想だろ

ベットを貸すよ

こっちの女はソファに移す」


さすがの櫻子も驚愕した

我孫子が考えていることがもうわからない

「…我孫子……わかったから

私のことが嫌いなんでしょう……

私は何されてもいいから

だから……

だから…

しこには何もしないで

しこは無関係なのよ……


彼女は何も悪くないわ……」


「櫻子、ダメや!
そんなに安く自分を売るんやないで!

あんたはいつも気高い女やんけ!」


櫻子がどぶネズミ男に抱き抱えられる

既に彼女は気力を失い
ぐったりとしている

「…わかってないな、櫻子

僕はね、もともとの狙いはキミじゃないよ」

「…えっ」

「…キミを苦しめる為に
キミを狙っても全然面白くないじゃないか……

キミはね、キミ以外の誰か大切な人が

キズついたとき

キミは嘆き悲しむんだ…


今回は僕にとって大変嬉しい機会だったね

まさかキミの方から、櫻子の方から

自分の身代わりを用意してくれるなんて

思いもしなかった……」


「…ウソでしょ……

我孫子…お願い…ウソだと言って…


しこはダメよ……しこは……あの子は

キズつけてはいけない子なの……


馬鹿みたいに正直で……まっすぐな子な

の……だめ!!


お願いだから、離してあげて‼︎」



「美しい友情劇だね

聞いていて寒気がするよ…」


我孫子は暴れる紫子を抱え、ソファに寝かせた

我孫子が
縛られた腕を紫子の頭上で
力づよくつかむ


「…ゔっ……やめろ、離せ……」


櫻子が色を無くし
絶望した目で
紫子をみる



櫻子の目から涙が流れる


「…櫻子、泣いてるの……?

僕と別れても、雫一滴さえ流さなかった

キミが

親友が襲われるのを

目の前にして泣いてるの……」



「……あんたと……我孫子、お前と

紫子じゃ、全然価値が違うのよ‼︎



天秤にかけるにも値しないわ‼︎」



櫻子は掠れる声で泣き叫んだ



「…きーめた!

おい、信二、お前、ちょっと待っとけ


お楽しみはこれからだ


先にこっちの女をヤル!」



我孫子が紫子の腰に乗っ掛かる


紫子は精一杯暴れるが


我孫子を押しのくことは出来ない



その時だった


「待って下さい!我孫子さん!」


カメラ分析をしていた男が我孫子を止めた

まさか…

「この女、外部と連絡取ってます!

このカメラ、携帯との通信機能付でした!」


「なんだと!!

……一泡食わされたなっくそっ!


おい、要、そのカメラで


この女の写真を撮るぞ!


櫻子は後だ!こっちが先だ!

この女をヤったほうが櫻子は傷つくからな!」


我孫子が紫子の帯を無理やり解く

脚はカメラ男に捕まれる


紫子は必死に嘆き叫ぶ


しかし

紫子の声は悲しいくらいに


部屋に響くだけだ

我孫子が浴衣に手をかける


「…やめて!!

ヤダ!……離せ!」


我孫子は

頬を緩ませ、目を細め、ニタリと笑う


我孫子の冷たい手が


紫子の胸を撫で回す



「…ゔゔっ…イヤだあ…やめっ」


「…もっと叫べよ…

誰も助けててやくれないがな」


我孫子の手が

紫子の腹上をそして太ももを撫で回す…


紫子自身もだんだん泣くことも

叫ぶことも出来なくなる


遠くの方で

櫻子が

ずっと自分の名前を叫んでいる


たが、今の紫子にはその声すら

届かない……

我孫子の言うように


もう何かを訴えたところで

無意味なのかも知れない



だったら


いっそのこと、このまま……



ーーれんちゃん……………。









その時だった





玄関の方から



勢いよくドアを破る音がしたーーー

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