阿漕荘の2人

小鳥遊くんの恋人 7

練無side

練無は紫子の腕を掴んで夜の街を歩く

とはいっても
まだ午後7時すぎ

ドラえもんが始まる時間だ
健全で純情
今どきの小学生はMステどころか

今日夜9時のシネマショーだって観てる

紅の豚だって観てる

20の若者が7時にデート

大丈夫、変な意味には
まだなってないぞ

あと3時間ぐらいしたら怪しいが

それまでには必ず帰るぞ

「れんちゃん……どこ行くの」

「何処ってデートだよ」

「えっ!誰と」

「僕と」

「誰が」

「しこさんが」

「ダメよそれ、浮気や」

「浮気?」

「そうや」

「……しこさん……彼氏したの?」

どうゆうことだ?

これじゃ、僕が一方的に悪者だ

「うちに?ちゃうで
キミや」
「僕?」

「そうや」

「話が見えないなり」

「森川くんと付き合ってるんやろ」

えっ??

森川くん??

森川のことか?

えっ?

「付き合ってる?」

「別に隠さんでええで
うちは寛大な女さかいなあ」


練無は足をとめる

紫子もとまる

「なんで?僕と森川が?
付き合うってなに?」

「メイク ラブ」

「それ、ちゃんと意味知ってるの
しこさんは?」


「別にいいんやで
アメリカやって全州で同性婚認めたやろ

日本だってそのうち……」

「……僕は中身は男だよ」


「えっ!

ってことは森川くんが実は女の子……」

「ちがーう!!!」


紫子が説明し始めた

どうやら僕と森川が付き合っていて


その真相を探るために合コンに参加したという経緯を


……なんて

……なんてはた迷惑なんだ……


……そんなこと……ちょっと考えれば分かるだろうに


「もうーなんだそれ」


「悪かったなーかんねんな」


「ぷんぷん」

「おこおこ」

「僕が怒ってるの」

「よしよし……いい子いい子」

「子供扱いしないで」

「うちが今度奢ってあげるさかいな」
「え、ほんと!」

「あらまぁ、そんなもんで気が済むんかいな

軽いな、キミは
超軽量極細スリム」

「しこはん、やめて」


2人は苦笑いをする、
そして再び歩きだす


「で、何処に行くの」

「ムードがあるところ」

「車屋か?」

「それはムーブ」

「うちとキミでムード作ってなにするの?
ご飯にかけて食べるのかいな」

「あわよくば、押し倒す」

「誰を」

「僕を」

「誰が」

「しこさんが」

「うち、キミと違って欲求不満なわけちゃうで

満足しきっとるで
一本満足やで」

「あれ、ホワイトチョコが美味しいよね

そうじゃなくて

しこさんに僕の魅力を気付かせるんだよ」


「れんちゃんの魅力知ってるで

今すぐうちが1000年に一度の美少女で
マネジメントしてやるさかい」

「それ、パクリだよ」

「じゃ、ビックバン以来」

「36億年ぶりなんだ」

「うん、いいな、それ

これでうちもがっぽり儲けるで

がっちりマンデー出演できるな

10年は食えるな」


「なんで10年?」


「キミも年をとるさかい
いつまで美少女キャラじゃいられへんもん

キミの場合、お色気路線は無理やからな」



「しこさん、僕でドキドキしないの?」


「するで
れんちゃんにどきんこ、どきんこ

ほら手が動いてるさかい」

「自分で動かしてるんでしょ」

「ちゃうで、どきん、どきん

あー脈拍上昇中や

アドレナリン大放出大売り出しや」

「バーゲンセール中なの?

胸触っていい?」

「えっち」

「何がえっちなの?

バーゲンセール?」


2人は駅の前に着く


「何処にいくの、れんちゃん?」

「海浜公園だよ」

「海浜公園?」

「この間いってないんでしょ?」

「今からかいな」

「今だから、いいんだよ

夜の海だよ」

「蚊がいるで
あと、カップル」

「ムヒを途中で買おうよ
うーん、
カップルに効くムヒはないからなぁ」


「そうやろ、気まずいで」


「僕らも混ざればいいんだよ」

「なんやその理屈」

「目には目を、歯には歯を」


練無は大人2人分の切符を買う


「ありがとう」

「どういたしまして
後はご飯とお酒を買おう」

「わぁい!お腹減って縮むところやったんや」

「しこさんってミミズみたいだね」

「なんやとう」

「ねぇ、しこさん」

「なんどすか」

「今夜は僕から離れないで」

「なして?海で迷子にはならんよ」

「今夜のしこさんには
悪い虫がつきそうなんだ」


「れんちゃんが虫除け?」

「そうだよ」


「虫もどっちかというと
うちよりれんちゃんの方が好きやと

思うんやけどな」


紫子が呑気なことを言っている

2人は海浜公園に行くために

電車に乗り込んだ
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