阿漕荘の2人

聖カトレシア学園 4

練無side

季節は暦の上では秋に差し掛かり
その日の神戸はいわし雲が広がっていた

「えー長らくお待たせしました

香具山 紫子とその他大勢の愉快な仲間たち、

それではみんなで一緒に神戸への第1歩をー」

「もう、踏んでるわ、しこ」

ズカ部の御一行は
神戸に着いたことでテンションも上がり

ざわついている

「ところで、しこさん、
聖カトレシア学園までどうやっていくの?」

そう、かの秘密の花園 聖カトレシア学園は
神戸でも港を少し離れた丘の上

否、森の中、にある

敷地面積なら

国立、私立大にも

引き目を取らない

「あー向かえが来るゆーてたで」

「向かえ?」

思わず駅を出て目の前に広がるロータリーを見渡す

大手を中心として沢山の観光バスが立ち並んでいる

「どの車かわかってる?」

「目立つからすぐにわかるで」

目立つと言っても

大型バスなんてほとんど同じなんじゃー


「あっあれや、あれ」

紫子が1台の車を指差した

一行は皆、指差された方向に目を向ける


まさに開いた口がふさがらない


「はっ……あれって」

「どうや、目立つやろ」


彼女が指差した車
それは
全長10メートルはあるんじゃないか
と思われる
リムジンカー

「ほな、行くかー」


一行は思わず、唾を飲み込む

リムジンに乗る機会なんて

人生で一度あるかないか

覚悟して歩みだす


「しこ……あんたって、ほんとに

感じ悪いわ」


「だから、なんや、その感じって」


「みんな、思っているわ」


「うーんと

みんなはこれから起こることに

びっくりしないで

欲しいんよ」


「なあに、しこさん、

これから、起こることって」

「世間から隔離され

一般常識から逸脱してしまった学園の

成れ果てや」


いまいち、しこさんが
言っていることにピンとこなかったが

今はそんな事に気を留めるべきではない


すると黒のリムジンカーから

白のワンピース姿に1人の少女が

降りてきた


そして、僕達は

その謎の少女の

次なる行動に驚愕する


「お久しぶりですです


黒バラ姫様」




少女は地面に膝をつき


紫子の手をとり、その手にキスをした



「あー執行部の 清見さんかな?

お久しぶりやね」

「わたくめの名前を覚えて頂き、誠に

感極まりない所存であります

今回は黒バラ姫様のご友人を

お迎えに参りました」



「うーん、乗っていいかな?」


「もちろんです

どうぞ中へお入り下さい」


少女は立ち上がり、リムジンのドアを開く


「みんなー入ってや」


ズカ部一行は黙って紫子に従う


中には
車とは思えないようなソファと
長テーブルがあり
そこにはすでにドリンクまで用意がしてある


「えっ、えっ、えー!!


ちょ、しこさんってばどういうことなの?!」


「………どうもこうも、あらへんってば」

「皆様、ここ神戸までいらっしゃって頂き
誠にありがとうございます

皆様の案内人を務めさせて頂く
執行部 部長の清見です

わからないことがありましたら
難なくこの清見に相談して下さい」

清見が頭を下げた


僕達はそれを苦笑いで見つめる


「そんなー固くなることなかよ
清見はんな

ここにいる奴らは
そこまでする義理ないでー」

紫子が清見の背中を叩く
「あんたに言われる筋合いはないわ」


「ところで、清見はん?
あんたが部長なん?」

「はい、先代のご指示を頂きましたので」


「……そうなんか

うん、みんなをよろしく頼むで」

「はい、善処いたします

ところで、黒バラ様?」


「なんや?」


「学園に着きましたら
理事長が黒バラ様にお会いしたいと仰せつかっております」

「…………そうか、分かったで」

「ちょっと、しこ!
あんた、何処いくのよ、私たちを置いて!」

「なんや、うちがいないと
寂しいのかいな?
ウサギがお前は!
大丈夫、清見のゆうこと聞いとけばなんとかなるで」

「しこさん、何処いくの?」

「挨拶回りや」

「挨拶?」

「うちも一介の卒業生やからな」

紫子が窓から外をみた

「ここは何にも変わらんな」

紫子が1人ごとのようにつぶやく


「もう見えてきました

あれが我が学園

聖カトレシア学園です」



僕もまた

窓の外を見た


そして目を疑う


それは校門と言うより

周囲を高い壁で覆われた


まさに監獄かのような


秘密の花園ー
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