阿漕荘の2人
November November 1
練無side
2週間に一度、国立t大の理学部 助教授
進藤先生が
n大に来て、医学部で授業をしていた
進藤先生の授業内容は解析数学概論の応用とその作用
あるいは集合学の実用化である
医学部で講義するべき内容ではない
つまり、専門外だと練無は感じてはいたが
実際のところ、進藤先生がかなり興味深い人柄であるため
この時間を楽しみにしていた
しかし、11月の初めての授業があるこの日
進藤先生はドイツのハノーバーで開催されるカンファレンスに出席するため
授業が急遽、休講になった
まったく、迷惑な話なんだよね
いくら年末間近で論文に切羽詰まってるからって
もう少し早く教えてほしいよね
たぶん、進藤先生は飛行機に乗りたいだけなんだろうな………
だから、わざわざ
海外の会議に積極的に参加するんだ………
あの人、世にも珍しいプロペラオタクだし………
そう、進藤先生の授業のさわりは
いつも飛行機やヘリコプターのプロペラで始まるという
医学とはなんの関係のない内容だ
手持ち無沙汰になった練無は
大学内の喫茶店に立ち寄った
「まつかわー!
隣いい?」
「もう、座ってるだろ」
「進藤先生の授業なくなって
暇なんだ」
「進藤先生といえば
あの人、t大の学生と付き合ってるらしいぞ」
「進藤先生が!?
ありえないよ、絶対!!」
「なんで?」
「あの人は普通の人間じゃダメダメ
人類初プロペラと結婚する男だよ」
友人 松川を見つけた練無は
2人掛けの椅子テーブルの空席に座る
「そういえば聞いたか、小鳥遊」
「なあに」
「駅前のネネちゃん人形、ナナちゃんになるんだって!」
身をより出し、小鳥遊 練無の顔をじっと
見ながら
真剣な趣きで彼 松川が話してきたこと
は大層どうでもいい事だった
「ネネちゃんがナナちゃん?
ネネちゃんってあのヌードの?」
ちなみにネネちゃんとは
大学最寄り駅前でそびえ立つ
身長5、6メートルのマネキン人形だ
普段はいつも裸だがクリスマスになると
赤いコートを着て、サンタクロースになる
ちなみに、ネネちゃんの周りには
いつも人だかりが出来ているが
彼らはネネちゃんのファンではなく
ただ待つ合わせをしているだけだ
「どうやらさぁ、ネネちゃんが
公然わいせつ罪で訴えられたんだって」
「それで、ネネちゃんどうなったの?」
「禁固3年 執行猶予6ヶ月」
「なんだそれー!、で、ナナちゃんは服着てるの?」
「ナナちゃんは服を着てるよ、囚人服だけど」
練無と松川は笑いあった
内容を聞いても
大変くだらない中身であった
「そういえば、松川はさぁ」
「おっなんだい」
「もぐらのチカちゃん知ってるかい?」
「もぐらのチカちゃん?
それはアレか、
小鳥遊のお友達か?」
「いや、友達じゃないよ
赤いタヌキのどん兵衛さんとは友達だ
けどね」
「おい!
そいつなら俺も知ってるぜ」
「うそー!!
世間は狭いねー!!」
「お前、アイツは知ってるか?」
「アイツ?」
「エレファントマン」
「ゾウ男?」
「ほら、いるだろ
薬局の前にさあ
オレンジ色の頭の大きな象がよ、
確か、恋人はピンク頭だぜ」
「あー!サトちゃんでしょ!」
「なんだ、お前も友達かよー
俺、ピンク頭狙ってんだ」
「わぁー略奪愛じゃん!!」
何度も言うようだが
この2人は将来、日本の医療を背負っていく者たちである
この会話で得られるモノは
つまり、セカンド オピニオンの重要性だ
「あーそうだ、小鳥遊にお願いがあるんだった」
松川はコーヒーを口にする
「お願い?
お金と身体はあげないよ」
「ばっか!
違うって!
俺は頭の上から爪の先に至るまで
根っからの女好きだ!」
「いっそ清々しいね」
「そうじゃなくてて、これ買ってくんねぇかな」
松川はテーブルにチケットを差し出す
「富士ウエスタンパーク?」
「そうそう」
「ウエスタンパークって何?」
「西部広場」
「そんなこと聞いてないし」
練無が頬を膨らます
「なんか、遊園地的な……」
「なにこれ?買えって?」
松川が練無に手を合わせ懇願してきた
練無は冷めた表情で彼を見る
「なんかさぁ、株の配当で貰っちゃたんだけど
20枚くらいあんの
半額でいいからさぁ」
「でもなぁ
いく人がなぁー」
「小鳥遊、女いねぇなら紹介するから」
松川が練無の腕を掴む
「うーん、付き合ってるわけじゃないんだけど、うーん………」
「えっ!嘘だろ!
小鳥遊ってそういう友達いんの!!」
「そういうって?」
「だから、セフ『まったぁー!!
それ以上言ったら、このコーヒーかける
からね!』
練無がコーヒーカップを右手に取り
自分の腕を掴む松川の腕を引き寄せる
「なんだよ、ちがうのかよ」
「…………なんで、がっかりしてんのさぁ」
「で、どうなの、その子誘えんの」
「彼女、最近、いろいろあって落ち込んでるんだよね……」
「何それ、チャンスじゃん!」
「……………そういうさぁ
人の弱みに付け込むようなマネはしたく
ないんだ、僕」
「その子、元気づけるって事で
いいじゃん」
「………でも、2人でしょ、
なんか誘いづらいし」
「2人で何処かに行ったりしないの?」
「いや、飲みに行ったりするけど…」
「お前らしくねぇぞ
男なら決める、即決!」
「なんか訪問販売みたいだな」
「買うの、買わないの」
「いくら?」
「2枚で3000円」
「高いな」
「半額だぜ」
「2000円なら買う」
「勘弁してくれよー」
「じゃ、松川の車貸して」
「……………小鳥遊
お前、最初からそれが狙いだろ」
「貸して」
「はいはい
ぶつけるなよ」
「大丈夫、僕はぶつけないよ
車が勝手にぶつかるんだ」
2週間に一度、国立t大の理学部 助教授
進藤先生が
n大に来て、医学部で授業をしていた
進藤先生の授業内容は解析数学概論の応用とその作用
あるいは集合学の実用化である
医学部で講義するべき内容ではない
つまり、専門外だと練無は感じてはいたが
実際のところ、進藤先生がかなり興味深い人柄であるため
この時間を楽しみにしていた
しかし、11月の初めての授業があるこの日
進藤先生はドイツのハノーバーで開催されるカンファレンスに出席するため
授業が急遽、休講になった
まったく、迷惑な話なんだよね
いくら年末間近で論文に切羽詰まってるからって
もう少し早く教えてほしいよね
たぶん、進藤先生は飛行機に乗りたいだけなんだろうな………
だから、わざわざ
海外の会議に積極的に参加するんだ………
あの人、世にも珍しいプロペラオタクだし………
そう、進藤先生の授業のさわりは
いつも飛行機やヘリコプターのプロペラで始まるという
医学とはなんの関係のない内容だ
手持ち無沙汰になった練無は
大学内の喫茶店に立ち寄った
「まつかわー!
隣いい?」
「もう、座ってるだろ」
「進藤先生の授業なくなって
暇なんだ」
「進藤先生といえば
あの人、t大の学生と付き合ってるらしいぞ」
「進藤先生が!?
ありえないよ、絶対!!」
「なんで?」
「あの人は普通の人間じゃダメダメ
人類初プロペラと結婚する男だよ」
友人 松川を見つけた練無は
2人掛けの椅子テーブルの空席に座る
「そういえば聞いたか、小鳥遊」
「なあに」
「駅前のネネちゃん人形、ナナちゃんになるんだって!」
身をより出し、小鳥遊 練無の顔をじっと
見ながら
真剣な趣きで彼 松川が話してきたこと
は大層どうでもいい事だった
「ネネちゃんがナナちゃん?
ネネちゃんってあのヌードの?」
ちなみにネネちゃんとは
大学最寄り駅前でそびえ立つ
身長5、6メートルのマネキン人形だ
普段はいつも裸だがクリスマスになると
赤いコートを着て、サンタクロースになる
ちなみに、ネネちゃんの周りには
いつも人だかりが出来ているが
彼らはネネちゃんのファンではなく
ただ待つ合わせをしているだけだ
「どうやらさぁ、ネネちゃんが
公然わいせつ罪で訴えられたんだって」
「それで、ネネちゃんどうなったの?」
「禁固3年 執行猶予6ヶ月」
「なんだそれー!、で、ナナちゃんは服着てるの?」
「ナナちゃんは服を着てるよ、囚人服だけど」
練無と松川は笑いあった
内容を聞いても
大変くだらない中身であった
「そういえば、松川はさぁ」
「おっなんだい」
「もぐらのチカちゃん知ってるかい?」
「もぐらのチカちゃん?
それはアレか、
小鳥遊のお友達か?」
「いや、友達じゃないよ
赤いタヌキのどん兵衛さんとは友達だ
けどね」
「おい!
そいつなら俺も知ってるぜ」
「うそー!!
世間は狭いねー!!」
「お前、アイツは知ってるか?」
「アイツ?」
「エレファントマン」
「ゾウ男?」
「ほら、いるだろ
薬局の前にさあ
オレンジ色の頭の大きな象がよ、
確か、恋人はピンク頭だぜ」
「あー!サトちゃんでしょ!」
「なんだ、お前も友達かよー
俺、ピンク頭狙ってんだ」
「わぁー略奪愛じゃん!!」
何度も言うようだが
この2人は将来、日本の医療を背負っていく者たちである
この会話で得られるモノは
つまり、セカンド オピニオンの重要性だ
「あーそうだ、小鳥遊にお願いがあるんだった」
松川はコーヒーを口にする
「お願い?
お金と身体はあげないよ」
「ばっか!
違うって!
俺は頭の上から爪の先に至るまで
根っからの女好きだ!」
「いっそ清々しいね」
「そうじゃなくてて、これ買ってくんねぇかな」
松川はテーブルにチケットを差し出す
「富士ウエスタンパーク?」
「そうそう」
「ウエスタンパークって何?」
「西部広場」
「そんなこと聞いてないし」
練無が頬を膨らます
「なんか、遊園地的な……」
「なにこれ?買えって?」
松川が練無に手を合わせ懇願してきた
練無は冷めた表情で彼を見る
「なんかさぁ、株の配当で貰っちゃたんだけど
20枚くらいあんの
半額でいいからさぁ」
「でもなぁ
いく人がなぁー」
「小鳥遊、女いねぇなら紹介するから」
松川が練無の腕を掴む
「うーん、付き合ってるわけじゃないんだけど、うーん………」
「えっ!嘘だろ!
小鳥遊ってそういう友達いんの!!」
「そういうって?」
「だから、セフ『まったぁー!!
それ以上言ったら、このコーヒーかける
からね!』
練無がコーヒーカップを右手に取り
自分の腕を掴む松川の腕を引き寄せる
「なんだよ、ちがうのかよ」
「…………なんで、がっかりしてんのさぁ」
「で、どうなの、その子誘えんの」
「彼女、最近、いろいろあって落ち込んでるんだよね……」
「何それ、チャンスじゃん!」
「……………そういうさぁ
人の弱みに付け込むようなマネはしたく
ないんだ、僕」
「その子、元気づけるって事で
いいじゃん」
「………でも、2人でしょ、
なんか誘いづらいし」
「2人で何処かに行ったりしないの?」
「いや、飲みに行ったりするけど…」
「お前らしくねぇぞ
男なら決める、即決!」
「なんか訪問販売みたいだな」
「買うの、買わないの」
「いくら?」
「2枚で3000円」
「高いな」
「半額だぜ」
「2000円なら買う」
「勘弁してくれよー」
「じゃ、松川の車貸して」
「……………小鳥遊
お前、最初からそれが狙いだろ」
「貸して」
「はいはい
ぶつけるなよ」
「大丈夫、僕はぶつけないよ
車が勝手にぶつかるんだ」