阿漕荘の2人
Love is beyond reason.理性を超えてたどり着く愛

Christmas cheer クリスマスのごちそう

紫子side


今夜は何かが起こる



そんな気がした






「れんちゃん…………」


「逃げないの?」



練無が熱い吐息を
紫子の耳に吹きかける




「れんちゃん………やめて…………」










自分はいま





どっちの道に進むべきだろう







答えなんて分かっているくせに………







もう止めることは出来ない








彼も彼女も…………




行きゆく場所にたどり着く





ただ、それだけだ。





「逃げた方が………いいん…かな……?」




「それが、正解」





「うちは…………」




「どうしたいの?」




その時だった




練無が紫子の耳たぶをかじる




歯を立てて、痛みを残すように、





「………やっ………みみ…………」





「早く決めないからだよ」





「やめて…………れんちゃん……」




拒む彼女の耳を



さらに、執拗に、むしゃぶる




「どうして悩むの?」




「あっ………………」




力をなくした紫子の脚は




その場で折れたたまれ





紫子はなだれ落ちるように




壁を背もたれにして崩れる






紫子を見下す練無の目は




征服感に満ちていた





「………どうする?しこさん?」




「…………れんちゃん…うちは……」




「…………」





「うちは…………れんちゃんのこと…」




紫子がその言葉を言い終わる前に



練無が彼女の手首を掴む



「えっ…………」



「目を閉じて」




練無はすぐさま、彼女のくちびるに




自分のそれを押し当てる




長く、執拗に




紫子は今まで感じたことのない衝動に囚われる






紫子は彼の背中に手をまわす





思った以上に広い背中が引き寄せられる




「………あっ………れん……ちゃん」




「しこさん………好きだよ」





彼のくちびるから伝わる毒は








苦く、甘く、そして冷たい。
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