阿漕荘の2人
紫子side


黙る紫子を見かねた森川は先手を打った


「この前のキス、気にしてるの?」


「えっ?!」



「なんだ、やっぱりそうなんだね」



「ああ、ああ、うんとな、えーとな………」




「ダメだよ、はっきり言わなきゃ」







……なんだか、うちは何も悪いことしてへんのに

浮気、責められてる気分やなあ……





「あー、えっとな、その………
あれはなんやったんやろかあ……?」


「あれってキス?」



「うー、まあ、そうやなあ………」



だんだん紫子の声が力を無くして小さくなっていく



「女の子を黙らせるには
キスが一番、効果的なんだよ」


「はあ?」


紫子は森川の衝撃の一言に耳を疑った


「香具山さんみたいなしゃべくり座衛門も黙ったでしょ」



「………しゃべくり座衛門って、なんや?はあ?ドラえもんちゃうし、伊右衛門ちゃうし、近松門左衛門ちゃうし」




「石川五右衞門?」



「また……つまらぬものを切ってしまった………ってあのなあ?!」


紫子はすかさず刀を振り回す真似をした




「調子いいね」


「ようような、森川どんな、まあな、
なんちゅう真似してくれたんかなあ、

なして、そんな乙女の純情踏みにじるようなこと、できんのかいな?あーん?」



「乙女の巡業?次は名古屋場所かな?」


「お耳の掃除してまっか?」


「香具山さんって意外と
可愛いところあるんだね」



「はあ?」



「酸素漏れてるよ」



「………ああ、きみってなあ、そうなんかいな、はーん、そんな素麺みたいな顔しとってなあ、かなりの遊び人やったんやな、やっと分かったでえ、ふーん」



紫子は得意そうに森川を見た


森川は呆れた顔をしている



「どころでなあ、森川くん
夜の帝王こと森川 素直」


「素敵な称号をありがとう」


「一世一代のお願いがあるんやけど………」



「あー、それは香具山さんの
その珍しいファッションに関係するのかな?」
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