猫とカフェ
「俺がこれ食べてる間に顔洗って歯磨いて準備しといて」
「え…マジで!」
黙ってジャムを舐めて答えてくれないのが答えのようだ。
「はあ…」
朝からため息の連続だが洗面台に向かい準備を始めた。
何でこんな事になっているのかよく分からないけど、私は今猫に支度をしろと
せかされ歯を磨いています。。。
なんて言っても誰も信用してくれないよね。自分でも信じられないくらいだし
誰に言う訳でもないが、落ち着かせる為に頭の中を整理しているのだ。
支度を終え、台所に戻ると皿は綺麗に舐められておりフェスタが遅いと言わんばかりに待ち構えていた。
「ジャム美味しいからあれやったら土産に持っていく?」
どんだけジャムが気に入ったんだ!!
「別にいいけど、封開けてあるし土産としては失礼じゃない?」
「いや、大丈夫。持って行こ」
言われた通りジャムの瓶をバッグに入れる。
するとフェスタが台所の壁に左の前足の肉球を押し当てた。
少しすると白い壁の奥に黒い道が細く繋がっているのが見える
暗すぎて先は見えないが、明らかに壁の向こうに道かある!
「行くで!」
ポカンと見ている私にフェスタが声を掛ける。
行くでと言われても真っ暗過ぎて普通に歩くのも怖そうだし懐中電灯も持っていない。とりあえず、壁と暗い道の境目まで行ってみたが状況は変わらず暗い道のままだ。
「あの…暗くて歩けないんですけど…」
フェスタがイラっとしたように振り返り、怖かったら目をつぶって歩くように指示をした。恐る恐る目を閉じ、えい!と気合を入れて歩き出した。
五歩ぐらい歩いた所でフェスタに呼ばれた
「目を開けてえーで」
近っ!!もっと手探りとかで歩かされる事を想像していたので、こんな事なら初めから教えてくれればいいのに…と心の中で思った。
目を少しずつ開けると猫の世界…ではなく、石でできている地下道?みたいな場所にいた。念の為後ろを振り返ってみたが、台所の風景はもうない。
目の前にある石の地下道をフェスタは進んで行くので、それについていく事にした。
ここが猫の世界なのかどうか景色からは分からないが、台所から移動した事は間違いない事実だ。石の地下通路をフェスタに続いて歩いていると、階段が見えた。上に登るらしく黙ったまま階段を上ると小さなドアがあり、中から明かりが少し漏れている。フェスタに促されてドアをノックした。
「どうぞー」
言われるままにドアを開けると、白いエプロンと帽子をかぶった猫…が椅子に座っていた。
「あ…初めまして」
どう言ったらいいのか分からなかったがとりあえず挨拶をしてみた。
「聞いとるよ~、修行しにきたんでしょ?お姉ちゃん」
「はい…宜しくお願いします」
少し小太りでいかにも甘い物大好きですと顔に書いてあるような見た目の猫だった。
「とりあえず座りんさいや」
フェスタといいこの猫といい…何なんだこの訛った感じは!と思いつつ猫が坐っている向かいの椅子に座った。
「チャ―ちゃんに土産見せてあげて」
フェスタが私の隣の椅子に座りながらジャムを見せるよう要求した。
「あの…封が開いていて申し訳ないんですけど…」
土産というには恥ずかしすぎる開封済のジャムを差し出す。
「あら!ええもん持って来たね~お茶でもいれるわ」
と嬉しそうにお茶の準備をし始めた。
今更だけど…よく見ると二足歩行だ。しかも言葉も通じている…
落ち着け!落ち着け…猫と思うからいけないんだ!私と同じと思おう!
しかも、もしかするとこの猫からこれから修行を受けるかもしれないんだし
いちいち驚いたリアクションをしていたらキリがない。
「はいお待たせ」
アイスティにスコーンが準備されている。
「わあ…美味しそう」
小ぶりなスコーンは程良く照りが出ていて、ディップ用のジャムもある。
「それもつけさせてもらおう」
チャ―ちゃんはブルーベリージャムを開けるとスコーンにつけて食べ始めた。
「ん!これイケるね~」
フェスタも他のジャムをつけて食べている。
私はイチゴジャムっぽい物と生クリームをのせて一口食べてみた。
「これは…美味しい!」
もともとスコーンは大好きだけどこの仕上がりは凄かった。
外はサクサクで割った時に中はしっとりしている。見た目以上に味が美味しかった。私がいつも買ってくるパン屋のスコーンもかなりお気に入りだが、それ以上に何かが違う。確認するようにしっかり食べてみる。
「この感じ…何か「出来なくて当然だよ。向こうにはない物が入ってるからね。だけど食べても気付く人は少ないから凄いね、お姉ちゃん」
チャ―ちゃんが褒めてくれているようだ。
「スイーツにはまあまあの味覚あるからな…普通やろ?」
どこ目線だ!と言いたいくらい上からフェスタが褒め言葉を終わらせた。
このスコーンの中には猫の世界で採れるハーブのような物が入っているそうだ。
それを乾燥させた物をすり潰して粉末状にした物を使っているのが定番らしい…
こちらの世界ではただの調味料に(お菓子作りの)使うだけだが、私達の世界の人が食べたら…チャ―ちゃんの説明をフェスタがさえぎった。
「カロリーオフでヘルシーな上に美肌にも効果あり!毎日のように食べたら綺麗になっていくで~は・だ・が!」
「分かってますよ。肌って念押ししなくても!でも凄くいい物なんで女性に人気が出そう。しかも味がほぼないならお菓子や料理に使っても邪魔しないし便利ですね~」
とはいったが、カロリーオフ…二匹の小太りの猫から言われても説得力が全くない。
「言うとくけど、こっちの世界のもんが食べてもダイエット効果はないで。ただの風味づけとか隠し味に使うくらいや。」
私の思っている事が分かったのかフェスタが補足する。
「あんたらの世界の女性は何かあれば美容・ダイエットに興味深々やろ。実際
これでダイエットに成功した向こうの人もおるし」
実験済み…なんだ。どういう経過で…とか野暮な事は細かく聞くまい。
話が長いと打ち切られるか、黙って聞けと言われるに違いない。
「そういう訳であんたのお店ではこれを使ってもらう。大好評間違いナシや」
「でも…それいつかなくなるでしょ?」
まさか自分の点数が取れたら終わりにするつもりなのか!と内心思ったがダイレクトには聞かなかった。
「いや、向こうでも育てる事できるから」
「あ…なるほど…」
先の話に予想もつかないので疑問や不安要素はたくさん出てくる…ツッコミたい事も多々あるが、黙って聞くしかないようだ。
「ところでお姉ちゃんお菓子は何が作れるん?」
チャ―ちゃんからの質問の答えに困った。
が一味違うのは分かるんだけど表現ができない…」
「出来なくて当然だよ。向こうにはない物が入ってるからね。だけど食べても気付く人は少ないから凄いね、お姉ちゃん」
チャ―ちゃんが褒めてくれているようだ。
「スイーツにはまあまあの味覚あるからな…普通やろ?」
どこ目線だ!と言いたいくらい上からフェスタが褒め言葉を終わらせた。
このスコーンの中には猫の世界で採れるハーブのような物が入っているそうだ。
それを乾燥させた物をすり潰して粉末状にした物を使っているのが定番らしい…
こちらの世界ではただの調味料に(お菓子作りの)使うだけだが、私達の世界の人が食べたら…チャ―ちゃんの説明をフェスタがさえぎった。
「カロリーオフでヘルシーな上に美肌にも効果あり!毎日のように食べたら綺麗になっていくで~は・だ・が!」
「分かってますよ。肌って念押ししなくても!でも凄くいい物なんで女性に人気が出そう。しかも味がほぼないならお菓子や料理に使っても邪魔しないし便利ですね~」
とはいったが、カロリーオフ…二匹の小太りの猫から言われても説得力が全くない。
「言うとくけど、こっちの世界のもんが食べてもダイエット効果はないで。ただの風味づけとか隠し味に使うくらいや。」
私の思っている事が分かったのかフェスタが補足する。
「あんたらの世界の女性は何かあれば美容・ダイエットに興味深々やろ。実際
これでダイエットに成功した向こうの人もおるし」
実験済み…なんだ。どういう経過で…とか野暮な事は細かく聞くまい。
話が長いと打ち切られるか、黙って聞けと言われるに違いない。
「そういう訳であんたのお店ではこれを使ってもらう。大好評間違いナシや」
「でも…それいつかなくなるでしょ?」
まさか自分の点数が取れたら終わりにするつもりなのか!と内心思ったがダイレクトには聞かなかった。
「いや、向こうでも育てる事できるから」
「あ…なるほど…」
先の話に予想もつかないので疑問や不安要素はたくさん出てくる…ツッコミたい事も多々あるが、黙って聞くしかないようだ。
「ところでお姉ちゃんお菓子は何が作れるん?」
チャ―ちゃんからの質問の答えに困った。
食べるのは大好きだけど、特に作れるような物はない…おしゃれな手作りお菓子を食べて育った記憶もないし、ここは正直に答えておこう。
「特に…作れる物はないです…」
するとフェスタが
「アレ…作ったれや」
「……」
フェスタがアレと言ったらすぐに分かるけど…人に作るのは恥ずかしいし、自分の家で楽しむ為の邪道のおやつだ。
うちはセレブなおやつも出ていなかったので、大人になってから色々知ったが
その中でも私が子供の時から好きな物はあっさりした小豆とチョコレート。
フレンチトーストはたまに作るが、休みの日の楽しみは上等なホットケーキミックスで小さなホットケーキ…いまはパンケーキと言った方がいいのか
とにかく小さなパンケーキをたくさん作り、小豆を挟んで生クリームものせてたまにはアイスを添えて気ままにデコレーションして食べるのが至福の時間だった。フェスタもすぐに寄って来ていつも作る時はおすそわけをネダってきて、あげるまで足元を離れないでよく鳴いていた。
多分、あの事を言っているのだろう…
「材料はここにあるからテキトーに使ってええで」
言われるままにキッチンを見てみると、普段使わない物まで色々ありワクワクする。お菓子作りを普段からチャ―ちゃんはやっているのが良く分かる。
メープルシロップや小麦粉にしても何種類もあるし、計量カップも様々な種類がある。オーブンも2つぐらいあるが私はこの使い勝手のよさそうな道具をほぼ何も使うことなくおやつを作るのが恥ずかしいぐらいだ。
ホットケーキミックスはなさそうだったので、目分量で小麦粉や薄力粉をブレンドしてごまかす事にした。
冷蔵庫も2つある。1つはバターや生クリーム卵等の材料がぎっしり入っておりもう1つには果物等が入っていた。
1つ目の冷蔵庫から必要な材料を取り出しもう一度よく見ると、うれしい事に小豆もあった。粒あんとこしあんが両方数種類揃っている。
「え…マジで!」
黙ってジャムを舐めて答えてくれないのが答えのようだ。
「はあ…」
朝からため息の連続だが洗面台に向かい準備を始めた。
何でこんな事になっているのかよく分からないけど、私は今猫に支度をしろと
せかされ歯を磨いています。。。
なんて言っても誰も信用してくれないよね。自分でも信じられないくらいだし
誰に言う訳でもないが、落ち着かせる為に頭の中を整理しているのだ。
支度を終え、台所に戻ると皿は綺麗に舐められておりフェスタが遅いと言わんばかりに待ち構えていた。
「ジャム美味しいからあれやったら土産に持っていく?」
どんだけジャムが気に入ったんだ!!
「別にいいけど、封開けてあるし土産としては失礼じゃない?」
「いや、大丈夫。持って行こ」
言われた通りジャムの瓶をバッグに入れる。
するとフェスタが台所の壁に左の前足の肉球を押し当てた。
少しすると白い壁の奥に黒い道が細く繋がっているのが見える
暗すぎて先は見えないが、明らかに壁の向こうに道かある!
「行くで!」
ポカンと見ている私にフェスタが声を掛ける。
行くでと言われても真っ暗過ぎて普通に歩くのも怖そうだし懐中電灯も持っていない。とりあえず、壁と暗い道の境目まで行ってみたが状況は変わらず暗い道のままだ。
「あの…暗くて歩けないんですけど…」
フェスタがイラっとしたように振り返り、怖かったら目をつぶって歩くように指示をした。恐る恐る目を閉じ、えい!と気合を入れて歩き出した。
五歩ぐらい歩いた所でフェスタに呼ばれた
「目を開けてえーで」
近っ!!もっと手探りとかで歩かされる事を想像していたので、こんな事なら初めから教えてくれればいいのに…と心の中で思った。
目を少しずつ開けると猫の世界…ではなく、石でできている地下道?みたいな場所にいた。念の為後ろを振り返ってみたが、台所の風景はもうない。
目の前にある石の地下道をフェスタは進んで行くので、それについていく事にした。
ここが猫の世界なのかどうか景色からは分からないが、台所から移動した事は間違いない事実だ。石の地下通路をフェスタに続いて歩いていると、階段が見えた。上に登るらしく黙ったまま階段を上ると小さなドアがあり、中から明かりが少し漏れている。フェスタに促されてドアをノックした。
「どうぞー」
言われるままにドアを開けると、白いエプロンと帽子をかぶった猫…が椅子に座っていた。
「あ…初めまして」
どう言ったらいいのか分からなかったがとりあえず挨拶をしてみた。
「聞いとるよ~、修行しにきたんでしょ?お姉ちゃん」
「はい…宜しくお願いします」
少し小太りでいかにも甘い物大好きですと顔に書いてあるような見た目の猫だった。
「とりあえず座りんさいや」
フェスタといいこの猫といい…何なんだこの訛った感じは!と思いつつ猫が坐っている向かいの椅子に座った。
「チャ―ちゃんに土産見せてあげて」
フェスタが私の隣の椅子に座りながらジャムを見せるよう要求した。
「あの…封が開いていて申し訳ないんですけど…」
土産というには恥ずかしすぎる開封済のジャムを差し出す。
「あら!ええもん持って来たね~お茶でもいれるわ」
と嬉しそうにお茶の準備をし始めた。
今更だけど…よく見ると二足歩行だ。しかも言葉も通じている…
落ち着け!落ち着け…猫と思うからいけないんだ!私と同じと思おう!
しかも、もしかするとこの猫からこれから修行を受けるかもしれないんだし
いちいち驚いたリアクションをしていたらキリがない。
「はいお待たせ」
アイスティにスコーンが準備されている。
「わあ…美味しそう」
小ぶりなスコーンは程良く照りが出ていて、ディップ用のジャムもある。
「それもつけさせてもらおう」
チャ―ちゃんはブルーベリージャムを開けるとスコーンにつけて食べ始めた。
「ん!これイケるね~」
フェスタも他のジャムをつけて食べている。
私はイチゴジャムっぽい物と生クリームをのせて一口食べてみた。
「これは…美味しい!」
もともとスコーンは大好きだけどこの仕上がりは凄かった。
外はサクサクで割った時に中はしっとりしている。見た目以上に味が美味しかった。私がいつも買ってくるパン屋のスコーンもかなりお気に入りだが、それ以上に何かが違う。確認するようにしっかり食べてみる。
「この感じ…何か「出来なくて当然だよ。向こうにはない物が入ってるからね。だけど食べても気付く人は少ないから凄いね、お姉ちゃん」
チャ―ちゃんが褒めてくれているようだ。
「スイーツにはまあまあの味覚あるからな…普通やろ?」
どこ目線だ!と言いたいくらい上からフェスタが褒め言葉を終わらせた。
このスコーンの中には猫の世界で採れるハーブのような物が入っているそうだ。
それを乾燥させた物をすり潰して粉末状にした物を使っているのが定番らしい…
こちらの世界ではただの調味料に(お菓子作りの)使うだけだが、私達の世界の人が食べたら…チャ―ちゃんの説明をフェスタがさえぎった。
「カロリーオフでヘルシーな上に美肌にも効果あり!毎日のように食べたら綺麗になっていくで~は・だ・が!」
「分かってますよ。肌って念押ししなくても!でも凄くいい物なんで女性に人気が出そう。しかも味がほぼないならお菓子や料理に使っても邪魔しないし便利ですね~」
とはいったが、カロリーオフ…二匹の小太りの猫から言われても説得力が全くない。
「言うとくけど、こっちの世界のもんが食べてもダイエット効果はないで。ただの風味づけとか隠し味に使うくらいや。」
私の思っている事が分かったのかフェスタが補足する。
「あんたらの世界の女性は何かあれば美容・ダイエットに興味深々やろ。実際
これでダイエットに成功した向こうの人もおるし」
実験済み…なんだ。どういう経過で…とか野暮な事は細かく聞くまい。
話が長いと打ち切られるか、黙って聞けと言われるに違いない。
「そういう訳であんたのお店ではこれを使ってもらう。大好評間違いナシや」
「でも…それいつかなくなるでしょ?」
まさか自分の点数が取れたら終わりにするつもりなのか!と内心思ったがダイレクトには聞かなかった。
「いや、向こうでも育てる事できるから」
「あ…なるほど…」
先の話に予想もつかないので疑問や不安要素はたくさん出てくる…ツッコミたい事も多々あるが、黙って聞くしかないようだ。
「ところでお姉ちゃんお菓子は何が作れるん?」
チャ―ちゃんからの質問の答えに困った。
が一味違うのは分かるんだけど表現ができない…」
「出来なくて当然だよ。向こうにはない物が入ってるからね。だけど食べても気付く人は少ないから凄いね、お姉ちゃん」
チャ―ちゃんが褒めてくれているようだ。
「スイーツにはまあまあの味覚あるからな…普通やろ?」
どこ目線だ!と言いたいくらい上からフェスタが褒め言葉を終わらせた。
このスコーンの中には猫の世界で採れるハーブのような物が入っているそうだ。
それを乾燥させた物をすり潰して粉末状にした物を使っているのが定番らしい…
こちらの世界ではただの調味料に(お菓子作りの)使うだけだが、私達の世界の人が食べたら…チャ―ちゃんの説明をフェスタがさえぎった。
「カロリーオフでヘルシーな上に美肌にも効果あり!毎日のように食べたら綺麗になっていくで~は・だ・が!」
「分かってますよ。肌って念押ししなくても!でも凄くいい物なんで女性に人気が出そう。しかも味がほぼないならお菓子や料理に使っても邪魔しないし便利ですね~」
とはいったが、カロリーオフ…二匹の小太りの猫から言われても説得力が全くない。
「言うとくけど、こっちの世界のもんが食べてもダイエット効果はないで。ただの風味づけとか隠し味に使うくらいや。」
私の思っている事が分かったのかフェスタが補足する。
「あんたらの世界の女性は何かあれば美容・ダイエットに興味深々やろ。実際
これでダイエットに成功した向こうの人もおるし」
実験済み…なんだ。どういう経過で…とか野暮な事は細かく聞くまい。
話が長いと打ち切られるか、黙って聞けと言われるに違いない。
「そういう訳であんたのお店ではこれを使ってもらう。大好評間違いナシや」
「でも…それいつかなくなるでしょ?」
まさか自分の点数が取れたら終わりにするつもりなのか!と内心思ったがダイレクトには聞かなかった。
「いや、向こうでも育てる事できるから」
「あ…なるほど…」
先の話に予想もつかないので疑問や不安要素はたくさん出てくる…ツッコミたい事も多々あるが、黙って聞くしかないようだ。
「ところでお姉ちゃんお菓子は何が作れるん?」
チャ―ちゃんからの質問の答えに困った。
食べるのは大好きだけど、特に作れるような物はない…おしゃれな手作りお菓子を食べて育った記憶もないし、ここは正直に答えておこう。
「特に…作れる物はないです…」
するとフェスタが
「アレ…作ったれや」
「……」
フェスタがアレと言ったらすぐに分かるけど…人に作るのは恥ずかしいし、自分の家で楽しむ為の邪道のおやつだ。
うちはセレブなおやつも出ていなかったので、大人になってから色々知ったが
その中でも私が子供の時から好きな物はあっさりした小豆とチョコレート。
フレンチトーストはたまに作るが、休みの日の楽しみは上等なホットケーキミックスで小さなホットケーキ…いまはパンケーキと言った方がいいのか
とにかく小さなパンケーキをたくさん作り、小豆を挟んで生クリームものせてたまにはアイスを添えて気ままにデコレーションして食べるのが至福の時間だった。フェスタもすぐに寄って来ていつも作る時はおすそわけをネダってきて、あげるまで足元を離れないでよく鳴いていた。
多分、あの事を言っているのだろう…
「材料はここにあるからテキトーに使ってええで」
言われるままにキッチンを見てみると、普段使わない物まで色々ありワクワクする。お菓子作りを普段からチャ―ちゃんはやっているのが良く分かる。
メープルシロップや小麦粉にしても何種類もあるし、計量カップも様々な種類がある。オーブンも2つぐらいあるが私はこの使い勝手のよさそうな道具をほぼ何も使うことなくおやつを作るのが恥ずかしいぐらいだ。
ホットケーキミックスはなさそうだったので、目分量で小麦粉や薄力粉をブレンドしてごまかす事にした。
冷蔵庫も2つある。1つはバターや生クリーム卵等の材料がぎっしり入っておりもう1つには果物等が入っていた。
1つ目の冷蔵庫から必要な材料を取り出しもう一度よく見ると、うれしい事に小豆もあった。粒あんとこしあんが両方数種類揃っている。