猫とカフェ
「まあ~ご~があ~ご~!」
大きな鳴き声で一気に目が覚める。
毎回思うけど、もうちょっと可愛い鳴き声はできないんだろうか…
年齢に関係なく性格の悪さと迷惑なのを分かってやっているに違いないと
ため息と共に起き上った。
「ホント毎朝、毎朝決まった時間に起きれるよね…」
フェスタの朝ごはんを準備し器を下に置いた。
いつもと変わらない光景である。
今日は先に歯磨きや洗顔を済ませる為に洗面台に向かい、支度を始める。
突然どこかに出かけると言われかねないからだ。
支度を終え、とりあえずアイスコーヒーを飲んでボーっとフェスタの動きを眺めながら考え事をしていた。
きっと私もどうかしている。この状況であまり動じていないからだ。
動じるどころかノートをパラパラめくりながら復習の続きを始めている始末だ。
「やる気になっとるようやな。人間やればできるちゅうことや」
仙人にでもなったのか!と言いたいのを堪えて
「まあ…親切に教えてもらったし、一応復習しとことうかと思って」
と普通に返答した。
「今日もチャ―ちゃんのとこ行くで」
「分かった。準備は一応済ませてるよ」
フェスタは無言のまま壁に肉球を当て、昨日と同じように暗い道が目の前に現れた。フェスタはそのまま歩き出し、私もついて歩いて行く。
一回体験しただけでこんなに違和感なく、行動が出来るもんなんだな…と思ってるうちに昨日と同じ石の地下道にでた。
猫の世界と言っても、まだここしか行き来はしてないが別の世界に来ているとはあまり思えない。ちょっと隣の家に遊びに来た感覚だ。
ドアの前にきてノックをすると
「はい、どーぞぉ」
の声と共に扉が開き同じタイミングでいい香りがしていた。
テーブルには今朝焼いたであろうパンが数種類とアイスコーヒーが用意されている。
「おはようさん。まあ、座ってまずは食べようや」
チャ―ちゃんは私達の朝食を準備してくれていたのだ。
席に座ると可愛いパンがたくさん並んでいる。
こんな素敵な朝食を準備された事なんか一度もない。
家にいたころでも、食パンを自分で焼いて自分で食べるのが当たり前だったし、ホテルにでも泊らない限り焼きたてのパンを食べさせてもらえる機会なんてなかった
「いただきます」
手に取ったのはシンプルなパンだけど、割ってみるとくるみとレーズンが入っていて何もつけなくても美味しく食べれそうなパンだ。



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