ナナイロ・ツバサ

蓮にい。

三月。蓮にいが東京に行く前日。

私は寝る前に蓮にいに会いたくて、コーヒーを持って部屋に入った。


コンコン。

「蓮にい、入るよ?」

「ん。」


私はドアを開けた。

入ってすぐ、蓮にいの背中が見えた。



前日なのに、まだ勉強中。

さすがだなぁと思いながら、コーヒーを机まで持っていく。


「結?」

「ぅん?」

「俺、東京行きたくねぇよ。」


珍しい蓮にいの弱音。

お兄ちゃんなのに、可愛いところもあった。

「私も、蓮にいと離れるの寂しいよ。」

「本当に?」

「うん。」


蓮にいは、シャーペンを置いてすごいスピードでメガネもとる。

そして、・・・。

蓮にいは、私の両手首をつかんで、目を見た。

「俺も。・・・結が必要だ。」


凄く大人の声が聞こえた気がした。


そのあとは、凄く動きがスローに見えた。

蓮にいの目線がいつの間にか、私の目じゃなかった。

蓮にいが見ているのは、目より少し下で。
どんどん近づいてくる。

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