寵愛の姫 Ⅰ【完】
「私を抱いた手で、莉茉に触れるんですか?」
手を振り解いた俺に茉莉は妖艶な笑みを浮かべた。
「…………、」
ぴたりと止まる俺の足。
……そうだ……
俺はこの手で、
…………この女を抱いてしまったんだ。
「それに、莉茉も天野さんの顔なんか見たくないんじゃないですか?」
「っ、」
くすくすと笑う茉莉の言葉が、俺の胸にぐさりと突き刺さる。
「ーーーもう、全てが遅いんですよ?」
……悪魔のような女が囁いた。