寵愛の姫 Ⅰ【完】



「まだ家には帰らないのか?」




人の波を眺める私の顔を、高崎さんが覗き込む。




「……うん。」



「怒られないか?」



「怒られる?誰に?」




私は首を傾げる。



「両親。」


「……。」




高崎さんの言葉を聞いた私の胸に、ひんやりと冷たい風が吹き込んだ気がした。
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