寵愛の姫 Ⅰ【完】
邂逅
それは、あまりにも不意打ちの声で。
「ーーあ?」
期待に弾んでいた男は、それでも、それが自分に掛けられた声だと分かったんだろう。
低い声が、その証拠。
「っっ、」
その低い声に、ぶるりと身体を震わせる。
…………怖い。
私の腕を引っ張っていた男がその声に足の歩みを止めて、不機嫌そうに後ろに振り返った。
「っ、天野さん!?」
が、
男のその不機嫌さも一瞬で蒼白な表情へと変わる。
そのお陰で、私を掴んでいた手の力も緩む。
「…?」
首を傾げ、目を瞬かせた。
天野さん…?