寵愛の姫 Ⅰ【完】





それは恒例の繁華街への見回りの時だった。




「……。」



突然ぴたりと立ち止まる暁。




ーーーー“何”かを一心に見ていた。



「……若?」


「……。」



俺の声にも反応しない暁に訝しんで視線の先を追えば、


…………あり得ない事に1人の女に行き着く。




……嘘だろ?




何度も目を疑うが、間違いなくその目は女へと向けられている。




まだ冬だと言うのに、コートさえ羽織らずに俯く横顔を、暁は黙って見つめていた。
< 217 / 381 >

この作品をシェア

pagetop