寵愛の姫 Ⅰ【完】
それは恒例の繁華街への見回りの時だった。
「……。」
突然ぴたりと立ち止まる暁。
ーーーー“何”かを一心に見ていた。
「……若?」
「……。」
俺の声にも反応しない暁に訝しんで視線の先を追えば、
…………あり得ない事に1人の女に行き着く。
……嘘だろ?
何度も目を疑うが、間違いなくその目は女へと向けられている。
まだ冬だと言うのに、コートさえ羽織らずに俯く横顔を、暁は黙って見つめていた。