寵愛の姫 Ⅰ【完】
綺麗なんて、絶対に男性に使う言葉ではないけれど、私の目の前に佇む存在は、そう思えるぐらいの容姿をしていた。
他者とは違う、圧倒的な雰囲気。
不思議な存在。
「そいつ、嫌がってんだろ?」
別に、声を張り上げた訳じゃなかった。
怒鳴ってもいない。
「おい、聞いてるのか?」
ただ、淡々とした声。
なのに、なぜか逆らえない。
「は、はいっ!!」
かくかく頷くナンパ男。
………………その姿に、さっきまでの威勢はなかった。