寵愛の姫 Ⅰ【完】



「……んんっ。」



苦しさにか、俺の服を握る莉茉に名残惜しくなりながらも、顔を離す。



「大丈夫か?」



顔を覗き込めば至近距離で絡まる莉茉の熱を孕んだ瞳。



「……っ、無理。」



小さく首を振った莉茉が俺の胸に顔を埋めてくる。


「…………、」



―――この顔を知るのは、俺だけだ。





ぐったりと凭れ掛かる莉茉の華奢な身体を抱き締めながら、優越の笑みを浮かべ、愛おしい女の髪を撫でた。
< 240 / 381 >

この作品をシェア

pagetop