寵愛の姫 Ⅰ【完】



「……、」



…でも…


―――叶くん。




記憶の中にいる彼の姿にちくりと胸が痛んだ。


「……。」



ちらつく残像を消し去りたくて、心地好い暁の温かい身体に擦り寄る。



「…可愛いな。」



そんな私の狡い行為にさえ楽しげにくすくすと笑う暁。



……ごめんなさい。




心の中で暁に謝りながら、身を任せた私は目を閉じた。
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