寵愛の姫 Ⅰ【完】



「っ、」



動揺に視線がさ迷う。



「ふっ、冗談だ。」



そんな私の髪に暁は愛おしげに口付けた。



「…冗談なの…?」


ぽかんと暁を見上げる。




…………それなのに焦った私って…。



「莉茉。」



がっくりと項垂れた私の顔を暁の手が顎に添えて持ち上げる。




「冗談なのは、今すぐ抱きたいって事だ。」


「……え?」



「お前の気持ちが整うまでは何も無理矢理に抱いたりはしねぇよ。」



暁の言葉で胸の中が凄く温かくなった。
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