寵愛の姫 Ⅰ【完】
……怒ってない?
「、」
その表情に、ほっと安堵の吐息を漏らす。
「お前みたいな奴が、こんな所に二度と来るな。」
「え?」
「さっさと帰れ。」
冷たい声だった。
「さっきので、懲りただろ?」
「っっ、」
「…夜の繁華街は危険だ。」
私に視線を向ける事なく、天野さんは最後にぼそりと呟く。
「っ、!」
淡々とした天野さんの声に、私の肩がびくり跳ねた。
慌てて見上げれば、天野さんの瞳は未だに人混みに視線を向けたまま。
それでも、私に言っているんだろうと思う。