寵愛の姫 Ⅰ【完】




「莉茉、焦らなくて良い。」


「…うん。」


「ゆっくり選べ。」


「…うん、ありがとう。」




ほっとしたように莉茉が俺に微笑んだ。






…………もしも、


俺が極道の若頭だと知ったら、その顔は一体どんな表情をするのか……。



別に、莉茉にずっと隠していたいと思っている訳じゃない。



ーーー何れは知れる事。




俺の顔と名前の知名度は大きくなりすぎているから……。




いつかは言うつもりではあるが、それは今ではない。




今はただ、


…………この笑顔を守りてぇんだ。
< 302 / 381 >

この作品をシェア

pagetop