寵愛の姫 Ⅰ【完】
「莉茉、焦らなくて良い。」
「…うん。」
「ゆっくり選べ。」
「…うん、ありがとう。」
ほっとしたように莉茉が俺に微笑んだ。
…………もしも、
俺が極道の若頭だと知ったら、その顔は一体どんな表情をするのか……。
別に、莉茉にずっと隠していたいと思っている訳じゃない。
ーーー何れは知れる事。
俺の顔と名前の知名度は大きくなりすぎているから……。
いつかは言うつもりではあるが、それは今ではない。
今はただ、
…………この笑顔を守りてぇんだ。