寵愛の姫 Ⅰ【完】
「…………分かったか?」
これは、警告だ。
覚悟がないなら、この場所へ来るなと。
彼からの隠された優しさと、現実を知らしめるような厳しい警告。
「…分かってます。」
からからの喉からどうにかそれだけを絞り出す。
……分かってる。
今、嫌ってほど強く実感させられた。
眠らないこの街は、とても危険なんだって…。
……でも…
天野さんの視線が私に向けられる。
「……分かったなら、早く帰った方が良い。」
「…………。」
―――私は、頷く気にはなれなかった。
ここは、唯一の居場所だから。