寵愛の姫 Ⅰ【完】



「莉茉。」



俯いて震える私の身体を暁が強く抱き締める。



「…暁っ…。」



ーーー助けて、暁。





嗚咽を飲み込みながら、唯一の温もりに縋り付く。



「――消えろ。」


「っ、」



低い暁の威嚇に誰かが息を飲む音が微かにする。



「莉茉はお前に会いたくないないそうだ。」


「っ、暁さん、それはっ…!」


「ーーー黙れ。」



静かな怒気にその場の空気が凍り付いた。
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