寵愛の姫 Ⅰ【完】



「叶、俺を怒らせるな。」


「……。」



それだけで叶くんは黙り込むのは十分で、その場が静まり返る。



「莉茉。」


「……暁?」



ふわりと髪を撫でられて驚きに見上げれば、私を見つめる暁の憂いを含んだ瞳と視線が合う。



「悪かった。」


「……え?」



暁の謝罪に目を見開いた。



「…何で暁が謝るの?」


「こうなったのは、俺がお前を家から連れ出したからだ。」


「…っ、違う…。」



首を横に振る。




…違う。




絶対にそれは違うよ、暁…。
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