寵愛の姫 Ⅰ【完】



「っ、」


次の瞬間、


力強い腕に抱き締められる。




私とは違う暁の香りと体温に安心感を覚えた。


「…暁。」


暁の裾を握る。



「…帰りたい…。」


「ーーーあぁ、帰ろうな。」



軽々と暁は私を抱き上げた。





そのまま胸元に擦り寄り、心音に耳を澄ます。




もう何も、



聞く事も、



見る事もないように、




視界を閉じて、暁の歩みの揺れに身を任せた。
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