寵愛の姫 Ⅰ【完】
「暁、あのね?
………本当に怖いのは、存在を“無”にされる事だよ…。」
莉茉の瞳が遠くを見つめる。
「…ねぇ、暁。」
「何だ?」
「…………そこに“在る”はずなのに、誰も見てもらえない時の恐怖感って分かる?」
「…いや…。」
首を横に振る。
常に高崎組の跡取りとして注目されていた俺には一生、分からない感情だろう。
だから、
…………きっと莉茉の痛みを完全には共有する事は出来ない。