寵愛の姫 Ⅰ【完】
「……両親は昔から明るい茉莉が優先で、“私”の存在はあの家ではないに等しい感じだったの。」
「……あぁ。」
「それが寂しくて、辛くて、悲しかった…。」
当時を思い出したのか、莉茉の顔が苦痛に歪む。
もっと早く、
……お前を見つけてやりたかった。
胸の中に後悔が渦巻く。
「…………そんなちっぽけな存在だった私を暁は見つけてくれた。」
「…莉茉…。」
俺の頬にある莉茉の小さくて華奢な手を強く握り締めた。