寵愛の姫 Ⅰ【完】

距離





「…また来てたのか。」


「…………。」



呆れたように呟く天野さんへと私は視線を向ける。



「……今晩は。」


「……あぁ……。」




小さく頭を下げた私に天野さんは肩を落とした。




あれっきり、もう会う事はないと思ってた天野さん。



でも、違って。




私がこうしていつもの定位置で座って人の波を見つめていれば、天野さんはどこからともなく現れた。
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