寵愛の姫 Ⅰ【完】

途切れる事のない人混みに目を細めて見つめる私の頬を、春風が撫でていく。



気持ち良さに、目を細める。



「……、このまま、」



この風が自分も浚ってくれれば良いのに。



願望を、言葉に乗せる。



聞く人は、誰もいないと知りながら。




「ねぇ、君1人?」


「…………。」



肩を叩かれて振り返れば、チャラそうな風貌の男が立っている。


見上げながら、私は首を傾げた。
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